以前、人生の幸福の形は何かと、短大の講義で問われたことがある。
 その講義は多くの学生が受講していて、ひまりが回答をする機会は回ってこなかったが、自分の回答を思いつかなかったため、当時のひまりは喜んだ。
 当てられた生徒は皆、「結婚」や「自由」など、当たり障りのないことばかりをずらずらと並べた。そんな様子を見て、さらにひまりは頭の中で回答に悩むことになる。
 幸福の形は皆が同じはずはない。しかし、明確な答えがあるとも思えない。
 一体、自分にとって「人生の幸福」とは何なのだろうか。

 あれから二年ほどが経過した今も、ひまりには答えらしい答えが思いつかなかった。
 
 二〇一八年、三月。ひまりは高校を卒業した。
    同年、四月。ひまりは短期大学へと進学した。
 二〇二○年、三月。ひまりは短期大学を卒業した。
          ひまりは私立保育園に就職した。