そいつは、虎の頭を持つ獣人騎士だった。

 体色はまばゆい黄金。
 虎の頭以外は全身を銀の鎧に包んでいる。
 手にしているのは長大な槍だ。

「【斬撃】【氷嵐】!」

 コーデリアがふたたび剣と魔法のコンビネーションを仕掛けた。
 先ほどフロアボスを倒したのと同じ攻撃だ。
 だが、

 ばちぃぃぃっ!

 そのいずれもが、奴の前面で弾け散る。

「バリア……!?」

 どうやら目に見えない障壁が、コーデリアの攻撃を防いだらしい。
 かなりの防御力だ。

「効かない――」

 コーデリアは表情を険しくすると、剣を手に突進した。
 近接戦闘に持ちこむ気か。

「きゃあっ!?」

 だが、奴に近づいたとたん、コーデリアはバリアに吹っ飛ばされた。

『エルシド』のバリア系の防御には、距離を詰めると無効化できるものと、距離を詰めてもバリアの防御力で対象にダメージを与えるものがある。

 どうやら、こいつが使うのは後者だったようだ。
 厄介なタイプのバリアである。

「大丈夫か、コーデリア!」

 俺は彼女の元に近づいた。

「ううう……」

 両腕が黒焦げになっている。
 無惨な姿だった。

「【治癒】!」

 俺は大急ぎで治癒呪文を発動した。

「ベルダ……様……」
「休んでいろ」

 苦しげな彼女に声をかける俺。

「あいつは――俺がやる」



 俺は虎の騎士と対峙した。

「……ほう、貴様は」

 と、奴が俺を見て驚いたような顔をした。

「この世界の理の外から来た者か」

 虎の騎士が告げる。

 こいつ、しゃべれるのか。
 いや、それよりも――

「世界の……理の外……?」

 俺は奴を見つめる。

 どういう……意味だ。

 今の言葉は、まるで――。