「ん……」

 重い瞼が不意に開けていく。
 その側には、知らない少女と幼女が心配そうな様子で見ていた。
 俺が目覚めたのに気付き、安堵していた。

「よかった……。 目が覚めたのですね」

「ここは……?」

 目覚めた先が、知らない場所だったので、側にいた少女に聞いてみた。

「クレストリア王国領内の町『ザッハトルテ』にある私の家です。 家族でピクニックに来ていた時に近くの川で流されていたあなたを見つけ、救助しました」

「そうか……」

 しかし、クレストリア王国に流れ着いていたなんてな……。
 それに、まさか四天王の一人を倒した後で裏切りに遭うなんてな。

「あなたは確か勇者様ですよね?」

「どうしてそれを?」

 隠す必要はないし、勇者の件は他国にも共有しているから、知っていても不思議ではないが、いきなりストレートに聞かれたので、戸惑ってしまった。

「流れ着いていた時、あなたの周りに光の膜が張られていました。 文献を調べた所、あれは勇者が予定外の危機に晒された時に発生される結界みたいでしたので、もしやと思い聞いてみました」

 それは旅立ち前に聞いた事があったが、まさか本当にそれが発生していたなんてな。
 予定外の危機とは、さっきの裏切りを意味してたのかな。
 俺は正直に打ち明ける事にした。

「ああ、俺はアグリアス王国から出発した勇者だよ。 だけど、途中で仲間だった者の裏切りにあって、崖から突き落とされてね……」

「そうなのですか……。 賢者と戦士が勇者様を裏切るなんて……」

 簡単な形で事の顛末を聞いた少女は、ショックで開いた口が塞がらないような様子だった。
 勇者パーティの賢者と戦士が俺を裏切り、聖女の妹と離れ離れにされたのだから。

「にーに……」

「ん?」

 ここまで黙って聞いていた幼女が、俺の頭に小さな手を乗せて来た。

「いいこいいこ」

 そのまま、俺の頭を撫でて来た。
 小さい手で撫でてくる健気さが俺の心に伝わってくる。

「ありがとうな……。 えーっと……」

「あ、私はセシリア・アルテミシオンと言います。 この子は妹のフィンランです」

「フィンランちゃんか。 ありがとうな」

「えへへ♪ にーに、げんきでた?」

「ああ、君のおかげだよ」

 俺はそう言ってフィンランちゃんの頭を撫でる。