テストも無事に終えて、いよいよ秋本番がやってくる

私の体調はすこぶる元気と言える日々に戻りつつあるが右手の人差し指は傷の治りが遅く、跡になってしまった

私は今、日向とデートに来ていた
デートと言っても紬のバースデープレゼント選びだった

日向はどうしても紬に似合うものが選べないと嘆いており、ほかの女の誕生日プレゼントなんて選びたくもないが日向といれるならと思い、今に至る

「日向ぁ、ブレスレットとかはぁ?」

私の気だるげな声が店内に響く

「おいおい、俺には一世一代のプレゼント選びだぞ?だるそうな声出すなよ」

と日向はケラケラ笑っている

制服ではなく私服の日向はより一層かっこよかった。綺麗な顔立ちを際立たせるシンプルな服装は日向のためだとさえ思える

私はため息をこぼす
このプレゼントに対して真剣な眼差しと優しい顔。紬の喜ぶ顔を浮かべてるのだろうか

私には見せたことがない顔

それが少し苛立たせてしまう

「ねぇあの二人カップルかな?すっごいお似合いだねぇ」

イライラしている中、こんな声が聞こえて少し気分がなおった私は見せつけるかのように腕を組んだ

「月、なに?どした?」

腕を組む私を払いのける訳でもなく、ただ目の前にあるマフラーに目を向ける日向

日向の側にいるのは私なのに…

日向の目には紬しか映ってない
今、ここに居ない紬にが目の前にいるのではないかと錯覚するぐらいに

私との時間なのに…いつの日かテスト勉強してる時、途中で消えた日向は私との時間だからって言ってたのに

やっぱり嘘だったんだね

「ちょっと…つ…」とさっきカップルだと錯覚した女の人の声が聞こえた

「ねぇ、2人で何してるの?」と聞き覚えのある声に振り返ると

そこには悲しい顔をした紬が立っている

「紬っ…あぁ別に浮気とかじゃねぇよ」と日向は慌てて、私の腕から離れ、紬の頬に手を添える

私は何も言わない
だって…この修羅場、私にとっては好都合

こうなる未来をどれだけ待ち望んだか

紬は終始悲しい顔をして涙が零れそうだったのに対して、日向は少し焦った顔をして、笑顔も隠しきれていない状況

少し話をしているのだろう、2人は会話している

「ねぇ○○…どうして私を…」と日向との話し合いが終わったのであろう、次に私に話が振られた

「紬〜。貴方の言いたいことは分かるわ、でもまた今度にしましょ?」

余裕な顔をして私は言い放つ

私は話がしたくない
泥棒()はまた私の(日向との時間)とっていくの?

勘弁してよ。

現実なんて見たくないの
それが悪い方向であっても、一緒に堕ちてくれるのが日向ならいいの

どうしようもないこの想いはもう好きなのかも分からない。もしかするとただの独占欲なのかもしれない

だってこんな想いになったのは“初めて”で紬も“知っている”でしょ?

___私は日向にややこしくなるからおいとまするわと一言告げると申し訳なさそうに日向は謝ってくれた

1人、帰り道を辿る

“雨のせいか”視界がぐらつく
周りの人は傘をさしてないのに、どうして私の場所は雨模様なのか

日向はまた紬を選ぶ
その事実が雨の量を増していく

傘をさしてくれるのが(日向)だったらいいのに…

______きっと今日の月はこの雨模様だ、雲で隠れてしまうだろうな
太陽が月をより一層輝かせてくれるのなら良いのに。