「実技試験はどうでしたか?」
エリスが待合室に入るなり、クロードが声をかけてきた。
筆記試験の出来について何も尋ねてこなかったクロードが、実技試験については逆だった。
それは、クロードなりにエリスの身に起きた異変に気がついたからに他ならなかった。
「不合格になったかも知れない……」
エリスは声を振り絞った。
「は? 試験官を怒らせるようなことでもなさったのですか?」
「そうじゃなくて……負けた」
「それで?」
「『それで?』じゃなくて! 試験が始まってすぐに負けたの。それもあっけなくね!」
「そうでしたか。私はまた別の理由かと」
「え?」
「いえ、『負けた』とおっしゃるわりにはあまり悔しそうな感じには見えなかったもので」
「あ……」
クロードに指摘され、エリスは初めて気がついた。
実技試験で結果を残せず、不合格の影がちらついたとき、エリスは真っ先に実技試験の相手である青年のことが思い浮かんだ。
「一応、聞いておきますが、その実技の相手とは?」
「えっと……確かこの学校の生徒だって言ってた……」
「他には?」
「あとは……剣が得意って……」
ここまで言うと、エリスは、自分が青年のことを全く知らないということを痛感していた。
(私、あの人の名前も知らないんだ……)
「仕方ないですね。今、こういう話をすると、緊張感が失われるので本当は言いたくなかったのですが……結論から申し上げると、その程度のことで不合格にはなりません。はっきり申し上げれば、ハーバート家が推薦状を出した時点で、もう合格は確定しているのです。筆記試験は解答用紙に名前さえ書けていればいいですし、実技試験は剣を持って構えているだけで合格です」
「もう合格しているってこと?」
「ええ、どうですか。少しは安心しましたか?」
「うん……」
クロードは懐中時計を確認した。
「もう間もなく面接の時間です。合格が確定しているからとはいえ、最後まで気を抜かないように注意してください」
面接は学校長と一対一で行われた。
「筆記試験と実技試験の結果を拝見いたしました。筆記試験は全問正解、推薦状の通り、大変優秀ですね」
「ありがとうございます」
「そして、実技試験の方ですが……」
クロードから合格は確実だと言われていたが、さすがにこの場で実技試験の結果に言及されるとなると、それなりに緊張した。
「まあ、彼が相手ならば仕方ないでしょう。もちろん、文武両道であることに越したことはありませんが、人には得手不得手がありますから。入学してからでも剣の腕を磨く機会はあります」
「え、それでは」
「ええ、合格です。当校への入学を正式に許可します」
エリスが待合室に入るなり、クロードが声をかけてきた。
筆記試験の出来について何も尋ねてこなかったクロードが、実技試験については逆だった。
それは、クロードなりにエリスの身に起きた異変に気がついたからに他ならなかった。
「不合格になったかも知れない……」
エリスは声を振り絞った。
「は? 試験官を怒らせるようなことでもなさったのですか?」
「そうじゃなくて……負けた」
「それで?」
「『それで?』じゃなくて! 試験が始まってすぐに負けたの。それもあっけなくね!」
「そうでしたか。私はまた別の理由かと」
「え?」
「いえ、『負けた』とおっしゃるわりにはあまり悔しそうな感じには見えなかったもので」
「あ……」
クロードに指摘され、エリスは初めて気がついた。
実技試験で結果を残せず、不合格の影がちらついたとき、エリスは真っ先に実技試験の相手である青年のことが思い浮かんだ。
「一応、聞いておきますが、その実技の相手とは?」
「えっと……確かこの学校の生徒だって言ってた……」
「他には?」
「あとは……剣が得意って……」
ここまで言うと、エリスは、自分が青年のことを全く知らないということを痛感していた。
(私、あの人の名前も知らないんだ……)
「仕方ないですね。今、こういう話をすると、緊張感が失われるので本当は言いたくなかったのですが……結論から申し上げると、その程度のことで不合格にはなりません。はっきり申し上げれば、ハーバート家が推薦状を出した時点で、もう合格は確定しているのです。筆記試験は解答用紙に名前さえ書けていればいいですし、実技試験は剣を持って構えているだけで合格です」
「もう合格しているってこと?」
「ええ、どうですか。少しは安心しましたか?」
「うん……」
クロードは懐中時計を確認した。
「もう間もなく面接の時間です。合格が確定しているからとはいえ、最後まで気を抜かないように注意してください」
面接は学校長と一対一で行われた。
「筆記試験と実技試験の結果を拝見いたしました。筆記試験は全問正解、推薦状の通り、大変優秀ですね」
「ありがとうございます」
「そして、実技試験の方ですが……」
クロードから合格は確実だと言われていたが、さすがにこの場で実技試験の結果に言及されるとなると、それなりに緊張した。
「まあ、彼が相手ならば仕方ないでしょう。もちろん、文武両道であることに越したことはありませんが、人には得手不得手がありますから。入学してからでも剣の腕を磨く機会はあります」
「え、それでは」
「ええ、合格です。当校への入学を正式に許可します」