モデルの依頼が終わって……
 翌日からは王都の観光をみんなで楽しんで……

 一週間が経った。

「んー、今日はどんなグルメに出会えるかしら?」
「オンッ!」

 スノウの頭の上で、リコリスが王都の地図を宙に浮かせて、見ていた。
 美味しい飲食店を探しているみたいだけど……

「ねえねえ、リコリス」
「なに? アイシャも一緒に行く? ふふん、あたしに任せなさい。この一週間、食べ歩きをしたリコリスちゃんは、王都の美味しいものマスターになったわ。肉も魚も甘味も、素敵なところを教えてあげる」
「太った?」
「あがっ!?」

 クリティカルヒット。
 アイシャの素朴な疑問に、リコリスは石化したように固まる。

「んー……言われてみると、妖精ちゃん、ぽっちゃりしてきたね。ボクって記憶力がいいから、そこは間違えないよ」
「え……ま、マジで?」
「マジマジ」
「………………」

 絶句していた。

「スノウ! 今すぐ、王都を100周するわよ!?」
「オンッ!」
「こらこら」

 涙目で駆け出そうとするリコリスをソフィアが摘む。

「ダイエットは後にしてくれませんか? 今日は、これからのことを話し合わないといけないんですから」
「ソフィアは、超絶可愛いミラクル的天才美少女妖精リコリスちゃんが太ってもいいっていうの!?」
「自業自得じゃないですか。そんなに食べたら太りますよ、って何度も言いましたよね?」
「うぐっ」
「運動するなら後で機会を用意しますから。まずは、話し合いに参加してくださいね」
「はーい……」

 この一週間、王都観光をたっぷり楽しんだ。
 それと、結婚式のモデルになるという思わぬ依頼も請けて、楽しんだ。

 そろそろ冒険に戻りたい。

 この王都で活動を続けるか。
 それとも、他の場所に移動するか。
 あるいは第三の道を選ぶか。

 みんなで話し合いたいところだ。

「ボクは海に行きたいな。みんなで海で遊ぼう?」
「遊ぶために旅をするなんて……」
「そういう、のんびりした冒険があってもいいんじゃない? 適当に依頼をしつつ、楽しむところは楽しんで。大きな目的がないなら、遊びをメインにするのもアリっしょ」

 言われてみるとそうかもしれない。

「アイシャちゃんは、なにかしたいことはありますか?」
「うーん、うーん……おいしいもの、食べたい!」
「オンッ!」

 じゅるりとよだれが垂れていた。
 スノウも、尻尾をぶんぶんと振っている。
 この一週間で、すっかりグルメツアーの虜になってしまったみたいだ。

「リコリスは?」
「あたしは、ダイエットできるならなんでもいいわ……」

 太ってしまったという事実が相当堪えているらしく、いつもの元気がない。

「フェイトは?」
「僕は……」

 考える。
 ただ、すぐに答えが思い浮かばない。

 レナが言っていたように、遊ぶことをメインに旅をしてもいい。
 アイシャが言っていたように、グルメツアーをしてもいい。

 というか……
 なんでもいいことに気がついた。

 アイシャがいて、リコリスがいて、スノウがいて、レナがして。
 そして、ソフィアがいる。
 みんながいればなんでもいい。
 一緒に楽しむことができれば、それでいい。

「質問を返してごめんだけど、ソフィアは?」
「私はなんでもいいですよ」
「……」

 答えが同じで驚いてしまう。

「みんなと……フェイトと一緒なら、きっと、どんなことをしても楽しい旅になると思いますから」
「……うん、そうだね」

 新しい旅をしよう。
 そして、新しい発見をしよう。

 でも、僕達は変わらない。
 離れることなんてない。
 ずっと一緒だ。

 たくさんの街を回り。
 色々なものを見て。
 みんなとの思い出を作って。

 そんな旅をしよう。

『フェイト、大きくなったら冒険者になって、一緒に旅をしましょう』

 幼い頃に交わした約束。
 ようやくそれを果たせるような気がした。

 楽しい時間はどこまでも続いていく。
 笑顔はどこまでも広がっていく。

 さあ。
 冒険に行こう。