「リコリス、力を貸してくれる?」
「もちろん!」
「ソフィア、ちょっとしたことをお願いしてもいい?」
「任せてください」

 僕は、とある賭けに出ることにした。



――――――――――



「レナ、いきますよ!」
「むー、ボクの相方はソフィアか」
「不満ですか?」
「もちろん。フェイトの方がいいな」
「我慢してください」
「ちぇっ」

 なんて軽口を叩きつつ、二人の乙女は災厄に挑む。

 聖剣と魔剣。
 対となる力を持ち、それぞれ攻撃を叩き込む。

「うっとうしイッ!!!」

 ジャガーノートは防御を捨てていた。
 ソフィアとレナの攻撃ならばそれなりのダメージを受けてしまうが、そんなことはもうどうでもいい。

 今は、目の前にいる人間達を消すことしか考えられない。

 憎い。
 憎い。
 憎い。

 なにもかも消し飛ばしてやる!
 そうやって憎悪を撒き散らしつつ、捨て身の攻撃を繰り返していく。

「くっ、一気に攻勢に出てきましたね……! レナ、気をつけてください」
「わかってる、わかってる。これくらい……うわわ!?」

 ジャガーノートに残った尾の一本がレナを捉える。
 が、直前でゼノアスが防いだ。

「大丈夫か?」
「う、うん……ありがと。うわー、今のはやばかった」

 嫌な汗を拭いつつ、レナはすぐに体勢を立て直した。
 そして、再び攻撃に転じる。

「後のことは考えなくて構いません! とにかく、ありったけの矢と魔法を叩き込みなさい!」
「冒険者の意地を見せる時だよ、ここで戦わずいつ戦うっていうんだ!」

 エリンとクリフも最大限の援護をした。

 彼らはソフィアのような力は持っていない。
 遠距離攻撃と治癒、バフをかけることが精一杯だ。

 それでもできることはある。
 力になっている。
 そう信じて、必死に戦い続ける。

「みなさんっ、いきますよ! 私に続いてください!」

 ソフィアは激を飛ばして皆をまとめる。

「ジャガーノートは、もはや災厄。その背景に同情することはあるものの、しかし、やつの放つ憎悪を受け入れるわけにはいきません。認めるわけにはいきません。なぜなら、私達には愛する人がいるから。その人達を守らないといけないから。故に、立ち上がるのです。剣を取り、立ち向かうのです。生きるために。守るために……一緒に戦いましょう!!!」
「「「おおおおおぉっ!!!」」」

 人々は奮起した。
 城のように巨大な獣に怯むことなく、勇気を持って立ち向かう。



――――――――――



 これはどういうことだ?
 圧倒的な力を持つ我がなぜ人間ごときに押されている?

 劣勢を悟ったジャガーノートは混乱の極みにあった。

 勝てる戦いだった。
 相手が聖剣を持っていようと魔剣を持っていようと、噛み砕き、血肉に変えてやるはずだった。

 それなのに、まったくうまくいかない。
 気がつけばこちらが体中に傷を負い、少しずつ追い詰められていた。

 その原因となる人間は二人。
 一人は、聖剣を振る女だ。
 そしてもう一人の男は……

「……どこに行っタ?」

 フェイトの姿が見えないことに気づいて……
 しかし、その時にはすでに手遅れだった。