「あーうー?」
「はーい、よしよし」
「きゃっきゃっ」
スティアート家のリビングで、ソフィアは末っ子のルーテシアを抱いていた。
慣れたもので、しっかりとルーテシアを抱いている。
心地いいらしく、ルーテシアは笑顔で、小さな手をソフィアに伸ばしていた。
「あらあら。ルーテシアちゃんは、ソフィアさんのことを好きになったみたいね」
「ふふ、そうだとうれしいです」
リビングにいるのはソフィアとアミラとルーテシアの三人だけだ。
他のメンバーは、剣の修理の準備を進めている。
ソフィアも手伝ってもよかったのだけど……
それよりも、幼い子を抱えつつ、一人で家事をするアミラのことが気になり、ルーテシアの面倒を見ることにしたのだった。
食器を洗い終えたアミラは手を拭きつつ、ソフィアの隣へ。
「ありがとう、ソフィアさんのおかげで助かったわ」
「お役に立てたのならなによりです」
にっこりと笑うソフィア。
ただ、その笑顔の下は、実は緊張でいっぱいだった。
スノウレイクにやってきて、しばらくの時間が経っているが……
フェイトを抜きにしてエッジやアミラと話をしたことはない。
いつもフェイトが一緒にいた。
だから特に緊張することもなく、自然体で接することができた。
しかし、今は二人だけ。
失礼をしてしまわないか?
嫌われてしまわないだろうか?
ソフィアの心境は、息子さんを婿にください! と挨拶をする者のそれで……
とてもとても緊張していた。
「あうー」
そんなソフィアの心をほぐすかのように、ルーテシアが触れてきた。
小さい指はとても温かく、自然と笑顔になる。
「ふふ、かわいいですね」
「ソフィアさんは、赤ちゃんの予定は?」
「え」
「フェイトと子供を作らないのかしら?」
「……えぇ!?」
ぼんっ、とソフィアの顔が耳まで赤くなる。
それから、大きな声を出してしまったことで、はっとした顔になり、慌ててルーテシアを見る。
ルーテシアは特に驚いてなくて、機嫌良さそうに笑っていた。
「ほ……」
「どうしたの、そんなに驚いて」
「お、驚きます。突然、そのようなことを言われるなんて」
「あら。でも、二人は付き合っているのでしょう?」
「……はい」
「結婚する予定なのでしょう?」
「……は、はい」
「なら、問題ないじゃない」
そういうものだろうか?
剣を極めたソフィアではあるが、こと恋愛に関してはド素人だ。
アミラの言うことが本当に正しいかどうかわからず、なんともいえない表情をしてしまう。
「子供を作るにはえっちをしないといけないけど、別にそれは恥ずかしがることじゃないのよ?」
「そ、そういうものですか……?」
「そういうもの。大事な人との子供を作るっていう、とても大事なことだし……そういうのを抜きにしても、好きな人の温もりをものすごく感じることができるの。それ、とても大事なことだと思わない?」
「そう……ですね」
ソフィアは、自分がフェイトとそういうことをしているところを想像した。
再び顔が赤くなった。
理屈ではわかっていても、まだまだ感情が追いつかない。
そんなソフィアを見たアミラは、孫の顔を見るのはまだ先みたい、と密かに思うのだった。
「それはそうと……ソフィアさん、ありがとう」
「え?」
突然のお礼の言葉に、ソフィアはキョトンとした。
「えっと……なんのことですか?」
「ソフィアさんがフェイトを助けてくれたのよね?」
「……知っていたんですか?」
「ううん、詳細はなにも知らないわ。ただ、フェイトが大変なことになっているのは、なんとなく想像できたから。定期的に届く手紙が届かなくなって、風の噂であの冒険者達がひどい人って知って……でも、私達はなにもできなかった。助けたいと思っても、そうするだけの力がなかった」
そう語るアミラはとても悔しそうだ。
一人の母として、子を守れないことを心底後悔しているのだろう。
「でも、ある日、手紙がまた届くようになったの。そこには、ソフィアさんのことが書かれていて……うん。手紙を見るだけでわかったわ。あの子はソフィアさんに助けられて、そして、充実した日々を送っているんだ、って」
アミラはそっと頭を下げる。
「だから、ありがとうございました」
「そ、そんなっ」
ソフィアが慌てる。
「私は、そんな大したことはしていません。フェイトを助けたというか、そんなことはなくて……フェイトは自分であの状況をなんとかしたのです。私は、少し背中を支えたくらいですから」
「それでも、ソフィアさんがいなかったら、どうなっていたかわからないわ。だから、やっぱりお礼を言わせてちょうだい」
「えっと……」
どうしよう? という感じで、ソフィアは視線をさまよわせて……
ややあって、アミラを見た。
その顔は凛々しく、そして、優しくもある。
「どういたしまして」
それだけで終わらなくて、
「それと、ありがとうございます」
「ソフィアさん?」
「私も、フェイトに何度も助けられてきて……だから、ありがとうございます。アミラさんに言うのはおかしいかもしれませんが、でも、今はそうしたい気分で……ありがとうございます」
「ふふ、どういたしまして」
ソフィアとアミラは互いに笑う。
そんな二人の優しい雰囲気にあてられたのか、ルーテシアはすぅすぅと穏やかな寝息を立て始めた。
「はーい、よしよし」
「きゃっきゃっ」
スティアート家のリビングで、ソフィアは末っ子のルーテシアを抱いていた。
慣れたもので、しっかりとルーテシアを抱いている。
心地いいらしく、ルーテシアは笑顔で、小さな手をソフィアに伸ばしていた。
「あらあら。ルーテシアちゃんは、ソフィアさんのことを好きになったみたいね」
「ふふ、そうだとうれしいです」
リビングにいるのはソフィアとアミラとルーテシアの三人だけだ。
他のメンバーは、剣の修理の準備を進めている。
ソフィアも手伝ってもよかったのだけど……
それよりも、幼い子を抱えつつ、一人で家事をするアミラのことが気になり、ルーテシアの面倒を見ることにしたのだった。
食器を洗い終えたアミラは手を拭きつつ、ソフィアの隣へ。
「ありがとう、ソフィアさんのおかげで助かったわ」
「お役に立てたのならなによりです」
にっこりと笑うソフィア。
ただ、その笑顔の下は、実は緊張でいっぱいだった。
スノウレイクにやってきて、しばらくの時間が経っているが……
フェイトを抜きにしてエッジやアミラと話をしたことはない。
いつもフェイトが一緒にいた。
だから特に緊張することもなく、自然体で接することができた。
しかし、今は二人だけ。
失礼をしてしまわないか?
嫌われてしまわないだろうか?
ソフィアの心境は、息子さんを婿にください! と挨拶をする者のそれで……
とてもとても緊張していた。
「あうー」
そんなソフィアの心をほぐすかのように、ルーテシアが触れてきた。
小さい指はとても温かく、自然と笑顔になる。
「ふふ、かわいいですね」
「ソフィアさんは、赤ちゃんの予定は?」
「え」
「フェイトと子供を作らないのかしら?」
「……えぇ!?」
ぼんっ、とソフィアの顔が耳まで赤くなる。
それから、大きな声を出してしまったことで、はっとした顔になり、慌ててルーテシアを見る。
ルーテシアは特に驚いてなくて、機嫌良さそうに笑っていた。
「ほ……」
「どうしたの、そんなに驚いて」
「お、驚きます。突然、そのようなことを言われるなんて」
「あら。でも、二人は付き合っているのでしょう?」
「……はい」
「結婚する予定なのでしょう?」
「……は、はい」
「なら、問題ないじゃない」
そういうものだろうか?
剣を極めたソフィアではあるが、こと恋愛に関してはド素人だ。
アミラの言うことが本当に正しいかどうかわからず、なんともいえない表情をしてしまう。
「子供を作るにはえっちをしないといけないけど、別にそれは恥ずかしがることじゃないのよ?」
「そ、そういうものですか……?」
「そういうもの。大事な人との子供を作るっていう、とても大事なことだし……そういうのを抜きにしても、好きな人の温もりをものすごく感じることができるの。それ、とても大事なことだと思わない?」
「そう……ですね」
ソフィアは、自分がフェイトとそういうことをしているところを想像した。
再び顔が赤くなった。
理屈ではわかっていても、まだまだ感情が追いつかない。
そんなソフィアを見たアミラは、孫の顔を見るのはまだ先みたい、と密かに思うのだった。
「それはそうと……ソフィアさん、ありがとう」
「え?」
突然のお礼の言葉に、ソフィアはキョトンとした。
「えっと……なんのことですか?」
「ソフィアさんがフェイトを助けてくれたのよね?」
「……知っていたんですか?」
「ううん、詳細はなにも知らないわ。ただ、フェイトが大変なことになっているのは、なんとなく想像できたから。定期的に届く手紙が届かなくなって、風の噂であの冒険者達がひどい人って知って……でも、私達はなにもできなかった。助けたいと思っても、そうするだけの力がなかった」
そう語るアミラはとても悔しそうだ。
一人の母として、子を守れないことを心底後悔しているのだろう。
「でも、ある日、手紙がまた届くようになったの。そこには、ソフィアさんのことが書かれていて……うん。手紙を見るだけでわかったわ。あの子はソフィアさんに助けられて、そして、充実した日々を送っているんだ、って」
アミラはそっと頭を下げる。
「だから、ありがとうございました」
「そ、そんなっ」
ソフィアが慌てる。
「私は、そんな大したことはしていません。フェイトを助けたというか、そんなことはなくて……フェイトは自分であの状況をなんとかしたのです。私は、少し背中を支えたくらいですから」
「それでも、ソフィアさんがいなかったら、どうなっていたかわからないわ。だから、やっぱりお礼を言わせてちょうだい」
「えっと……」
どうしよう? という感じで、ソフィアは視線をさまよわせて……
ややあって、アミラを見た。
その顔は凛々しく、そして、優しくもある。
「どういたしまして」
それだけで終わらなくて、
「それと、ありがとうございます」
「ソフィアさん?」
「私も、フェイトに何度も助けられてきて……だから、ありがとうございます。アミラさんに言うのはおかしいかもしれませんが、でも、今はそうしたい気分で……ありがとうございます」
「ふふ、どういたしまして」
ソフィアとアミラは互いに笑う。
そんな二人の優しい雰囲気にあてられたのか、ルーテシアはすぅすぅと穏やかな寝息を立て始めた。