「ねぇ、翔。本当に行くの?」
「当たり前だろ!!俺が最初で最後の成功者になってやる!」

夜の10時頃、高校生ぐらいの男女の二人組がしもたやの前で立ち止まり、まじまじと建物を見つめながら会話をしていた。

女子高生の方は美紀といい、少し怯えた様子でもう一人の翔という男子の後ろを追うように歩いていた。

辺りは暗く、その日は特に風が強かったため、ちょっと気を抜いたら、風で背中が押されそうなほど強風だった。
「ねぇ、やっぱり帰ろうよ…。」


美紀は、声を震わせていうが、翔にはこれっぽっちも届かず、逆に翔は楽しそうな
表情をしていて、これは私には止められないと諦めて、後についていくことにした。


…が、建物に足を踏み入れたその瞬間。



「バァァァァァァン!!!!」

勢いよく扉の閉まる音がした。



「え」

私たちは、後ろを振り返り扉が開くかどうか確認すると…。


「開かない」


「嘘でしょ!?」


翔は、とりあえずカメラを手放さないようにカメラと手を持ってきたテープで固定した。
これなら、完全に映像に収められると、その時は思っていたからだ。
「とりあえず、他の出口を探すために一階のフロアをすべて見よう」

翔は、美紀に服の裾を掴むように言い、はぐれないようにし、一歩一歩暗い廊下を歩いて行った。

床のきしむ音が廊下に響き渡り、風が強いせいかガラス窓の揺れる音も、全てが恐怖へと変わっていった。

ただ、唯一心の助けになっていたのが、懐中電灯の光だった。

が、次の瞬間。


「バンッ!!!」

懐中電灯が何かにはじかれる音がし、その衝撃で違うフロアまで懐中電灯が弾き飛ばされ、次の瞬間。

「キャッ!」

後ろから美紀が転ぶ音がし、俺は慌てて後ろを振り返った。
「美紀!大丈夫か!」

すると、美紀の返事が聞こえなかった。


「美紀…、そこにいるんだよな…?」

俺は、後ろに声を掛けたが、返事が返ってこない。


明かりがない状態で、美紀を探すのは難しすぎる、だからといって懐中電灯を取りに行ってる間に、美紀が別の場所に行ったら…。


考え抜いた結果、俺は先に懐中電灯を取りに行くことにした。何も見えないで闇くもに探せば、かえって更にパニックになりそうだったからだ。

「美紀、もうちょっと待っててくれ…!今、懐中電灯を拾ってくるから、絶対そこを動くなよ!」


それでも、美紀の返事はなかったが、とりあえず今は懐中電灯を取りに戻るしかないと、懐中電灯の方へ歩いた。
前の方に障害物がないか、両手を前に出しながら一歩一歩懐中電灯の方へ近づいて行った。

そして、懐中電灯まで後もう少しだと思い、手を伸ばした次の瞬間、懐中電灯が急に宙に浮きだし、ゆっくりと反対側へと動き出した。

「え…なんで…」

俺は、恐怖のあまり一気に血の気が引いたが、良く見ると懐中電灯の取っ手に人の手が映っていて、よく見ると人が持って動かしていることに気づいた。


「もしかして美紀…?」

俺は、慌ててその懐中電灯の光を追った。

だが、その光は何の迷いもなく二階へと上って行った。


(…おかしい。美紀がこの家の構造を把握しているわけがないのに)


だが、そう考えを待ってくれる余地はなかったので、俺は無我夢中でその光を追った。

階段を慎重に上り、手で壁を抑えながら、少しでも早くと早歩きをした。

すると、光は棚の上に置かれていた。
俺は、恐る恐る懐中電灯に手を伸ばし、再び明かりをゲットすると、急いで美紀を探そうと後ろを振り返った時だった。


「ゲームオーバーだよ」



「ガッ!!!!!」


後ろから何かで殴られ、俺は地面に倒れこんだ。
暗闇だったため、激痛を感じ、俺は目を開けるので必死だった。


「選択を間違わなければ“クリア”したのにね」


かすかだけど、誰かがしゃべる声が聞こえていた。
そしてうっすらと見えるのは、誰かの足。


「じゃあ、眠ろっか。おやすみ」


二度目の衝撃で、俺の記憶は途絶えた。