ハジメは オーナーズルームに、
保管していたキャンバスを
イーゼルに飾って、室内の照明を
消す。

すっかり日も暮れて
照明を消せば、カーテンを引いた
室内は 真っ暗になる。

そうして、ハジメは 飾った
キャンバスの面に、 手にした
ブラックライトを当て 見た。

う~ん。
シオン君が レポートしてくれた
作品が、『No.12』だったとはね~。

と ハジメは 愉快そうに、
その キャンバスに 目を光らせた。

さて~、
Dirの電話から、もうすぐ
この 『No.12』に ゲストが
やって来るらしい。
どうなること やらだねぇ。



ハジメは 再び 部屋の照明を
光々と点けて、デスクチェアに
座って、クルンと回ってみた。

普段なら オフィスの終業時間になれば、サカキバラ夫妻と共に、
生活をする 近くの別屋敷に、
戻るのだハジメだが、今日は
昼間の事から、戻るつもりは
無かった。

そうしている内に、
車が止まった気配がするれば、
サカキバラが ギャラリー玄の関を
開けて、上に通す手筈だ。

案の定、暫くして、ハジメがいる
オーナーズルームのドアが、
ノックされた。


「やあ~ Assoc君は、鳥でなくて、コウモリだったかなぁ?」


サカキバラの後ろから、
カスガが現れたのをハジメが視線で捉え、声をかける。

「コウモリ?っすか?」


中に促されと、仏頂面をした
カスガはハジメの前で、答えた。

「昼間に君のとこのDirが言ってたろぅ? 私が付けてる薫りが『月下美人』だって。あの花は 夜に1日だけ咲く花だけど、受粉に呼ぶのがね、鳥でも虫でもない、コウモリなんだよねぇ~。」


後ろのドアは
閉められたが、サカキバラが
気配を潜めて 隅にいるのを、
ハジメは キッチリ 確認している。

「君は バットマンてわけだぁ~。さあ、私の所から、何を持って行くつもりなのかなぁ?」


そんな のっけからの、
ハジメの挑発に、カスガは、
ハジメの横にある 布が掛けられたイーゼルを睨んだ。

「私が居なかったら、盗む勢いだよね~、バットマン?」

ハジメは、
睨んだままの カスガに
オーナーズルームの革張り
キャメルソファーに座る事を示して揶揄する。


カスガは 示されたままに、
ソファーへ座り、

「ハジメオーナーっ。その絵を 公にすんのを 止めて下さいっ!」

ハジメを真っ向から 見据え、
言い放った。
ハジメは 暫し、カスガの顔を
思案するかの様に 凝視する。
そして、覚悟を決めた
声で、カスガに告げる。


「Assoc君~。このモデル、只の片思いのお嬢さんではないよねぇ?」

そうカスガに
質問しながらも、
ハジメは、隣のイーゼルに
立て掛けている、
キャンバスに
一旦、顔を向けて、
カスガを見た。

「ここに、描かれているのはAssoc君を、スウィートホームで待つ、ハニーでいいのかな?」

「、、、」


「Assoc君 てぇ、もしかして学生結婚?で、デキ婚とか?高校卒業とかで 直ぐなんじゃない~?きっと、図星だよねぇ。」

カスガは、無言だったが、
その目に ハジメは
何かしらの焔が揺らぐのを
見つけると、

「しかも誘ってきたのが~、意外にもハニーからとかぁ?違う?」

畳み掛ける。

さすがに、カスガが口を開いた。

「ち、違いっます!ちゃんと、オレが告白してっす。」


カスガが手を、
壊れそうなぐらい
握り締めているのを、
ハジメは 気が付いている。

ああ、目の前のAssoc君も、
これは 冷や汗かいてるよ~。

「で、それも My Mestoroにでも相談して 、告白にお墨付きでも貰っての行動だった?。」

「?!その、通り、ですっ。」

はあ~、これは Assoc君は、
口にする勇気もないだろうし、
私が ハズレクジを引いたよん。


「ねぇ~、『No.12』以外の
少女達は 、本当に みんな後ろ姿の制服なんだよぉ。なのに、
この少女は 正面を向いた
半身裸体の女神。実は Assoc君、 完成品を見たのは今日が初めて
なんでしょ~?」

この言葉に、カスガの目が
大きく見開く。それは 今日、
昼間に アトリエへカスガが入ってきた時に見た顔と同じだと、
ハジメは 確信する。


「『No.12』の女神は、瞳を閉じてまるで眠っているみたいだぁ。この顔って、どんな時の表情なのぉ?Assoc君は 分かるんじゃないのかなあ~。」

もう、
そう昼間も、蒼白だったんたよねぇ。
まるで、不倫現場に遭遇した
男の顔見たいだったんだよ~、
Assoc君。


「あとぉ、1ついい~?」

ハジメは、まだ布が掛けられた
キャンバスをの淵を手にして、

「この絵~、不可視インクで、
女神に何かしら描かれてるんだけどぉ、ーーー Assoc君、
気にならないかい!?」

大袈裟な程に、
頭を振って ハジメは、カスガを
挑発する。

カスガは 昼間の再来、
崖に 追い詰められた
犯人の様な顔をしている。

「く、うぅ、」

とても、声を出せそうに無い
カスガを前に、ハジメは非情な台詞を続けた。


「まあ?いいや。で、さっきの話だけどぉ、Assoc君もわかるよね~。Assoc君の希望には、『無理だよん。』が答えだぁ。
委託さるている以上、価値を発信するのが、仕事だからねぇ。」


「、、じゃ、あ。売って、、下さい、」

呻くような、声が 相手から
発せられた。



「本気~?、そりゃAssoc君のモノにすれば、インクを確認する事もできるわけだしねぇ。」

それは、なんという表情~。

「いくら、な、んですかっ、」

「Assoc君は、

この絵を幾らで

買ってくれるの?。」



そんはに、ショック受けたみないな顔されてもね~♪

「絵ってねぇ、本当にピンから
キリだよ~。1号2万円から、
200万円も 幅があるぐらいぃ。
この絵はF40号。どう?」

ハジメは、立ち上がって
キャンバスを持ち上げる。

カスガが、そのキャンバスから
まるで目を放さないで、

「あ、80万から、、2000万円、ですっか、」

明らか 落胆した声で 嘆く。

「それが基本ねぇ。ネームバリュー付くとまた 別。さて、この絵は Assoc君には、どれだけの価値があるぅ?」

それと、現金は今日、
用意出来ないよね~と
ハジメなりに 気を使う素振りだ。

でも、いい考えを思い付いたと

カスガの左手にある
指輪を指差して、

「その、ハニーとのマリッジリングを担保に預かる~」と

口を弓なりにして、ハジメが
カスガに

提案してきた。