とんだ修羅場になってしまった。

 全裸のタカオに半裸の菊理を見つけて卒倒しそうになった老婦人に、きょとんとするタカオ。
 老婦人の悲鳴は恐らく階下にいるだろう夫に聞こえているのだろうが、何者かが階段から登ってくる気配は無かった。
 タカオがかろうじてTシャツとトランクスを身につけ、菊理がワンピースを纏った。シャワーを浴びている時間が無かった為廊下側の襖を開け放してはあるが、気まずさはこの上なく、菊理はうつむく他無かったのだが……。
「お客様、誠に、誠に申し訳ありませんっ……」
 老婦人は畳を額にこすりつけるがごとくに土下座をし、隣に座らせたタカオにも同様、土下座するよう求めた。
「何だよ、母ちゃん、何が申し訳ない なんだよ」
 タカオは、まったく悪びれる様子は無い。確かに、どう考えても同意の上であるし、どちらもよい大人なのだ。
「おま……おま…おま…」
「おま××?」
「たわけっ!! お前ときたら何て事をしてくれたんだいッッ!!!」
「えー、だって、したかったし、嫌がられなかったから」
 そうなのだ、だから菊理は居心地が悪くてしょうが無かった。
 菊理が確かめたいのはむしろ別の事だった。
「あの、私はその……いいんです、あの……」
 合意の上、ですし、と、消え入りそうな声でつぶやいてから、咳払いの後声を張って尋ねた。
「彼は、しょっちゅうこういった事を?」
 宿泊客相手によくこうした事をしているのか、それだけが気がかりだった。
「いえっ、……あの……その」
「俺、ククリとするのが初めてだもん」
 けろっとタカオが言った。老婦人の方も、半ばあきれながら、はい、本当に、このような不始末は初めての事で……と、言い添えた。
「お客様、それであの、このような事を申し上げるのは大変心苦しいのですが……」
 逆に、老婦人は菊理の事を都会からきた性的に奔放な女だと納得したのだろう。別の事を気にするようになって言った。
「あのことは どうかご内密に……」
「……それは、タカオの……×××の事ですか?」
 菊理が声をひそめる。今、この民宿にいる泊り客は菊理だけだったのだが、内容が内容だけに、どうしても大きな声で話をする気持ちにはなれなかった。
 タカオのペニスは、二本あったのだ。