ルビコン

「なんだその目は?教師に向かって何考えているんだ?あぁ?」

愛藍が小緑を止めようとするが、愛藍にとっても黒沼という男はトラウマのようだ。
いつもの強気の愛藍ではなく、表情が怯えている。

手が震えている。

でも唯一黒沼と面識がない樹々は違った。
花菜を慰めながら樹々は声を張った。

「あー、えっと違うんです!二人はそこの女の子を助けたって言うか」

その言葉に、黒沼の視線は樹々と花菜へと移った。
教師らしく、いじめられた生徒を慰めてくれるかと思ったけど、こいつは黒沼だ。

葵と愛藍に池に落とされた私を怒鳴った糞みたいな教師だ。

だから、ものすごく嫌な予感がした。
被害者の花菜が怒られる予感がしたけど・・・・・。

本当にその通りになった・・・・。

「江島、どうやって学校に入った?『日曜日は許可がないと学校に入れない』って知っているのか?」

「ご、ごめんなさい」

花菜は泣きながらも、頑張って謝まった。
勇気を出して声を出したのに・・・・。

「謝るんじゃなくて俺の質問に答えろ。どうやって学校に入った?」

黒沼の表情は変わらない。
まるで人を人だと思っていないような、ふざけた表情。

被害者の花菜を冷たい視線で黒沼は見ていた。

一方の花菜は腰が抜けて、再び泣きそうな表情を浮かべている。
大切なカチューシャを握りしめていた手に、再び涙が落ちた。

苦しそうな表情を見せるけど・・・・・。

花菜はしっかり黒沼の言う通りに答える。

「友達と鬼ごっこしよって・・・・。本当は花菜、いじめられているだけなのに」

花菜の言葉に間違いはないと思う。
それに頑張って、『自分がいじめられている』ことを先生に伝えた。

先生もその言葉に答えるのが普通なのに・・・・。

「お前は兄と同じで本当に嘘つくのが好きだな。何回嘘を付いたら気が済むんだ?大人を舐めて楽しいか?」

黒沼は最低の教師だ。
生徒を印象だけで判断して、生徒の言葉を一切聞かない。

花菜は本当の事を言っているのに、黒沼というクズ教師は一切彼女の声を受け付けない。

っていうか、だったら『質問に答えろ』とか言うなよ。

それって生徒を馬鹿にしているだけじゃないの?
教師が生徒をいじめて楽しいの?

教育者の立場なのに、何考えているの?
何を教えようとしているの?