浅草には小さなアミューズメントパークがある。
日本で一番古い遊園地というだけあって、浅草に住む者にとってはとても馴染みのある場所だ。
友達の少ない来夢ですら例外ではなく、訪れたことはあった。
だが……、
「いくぞ」
「よろしくお願いします」
「……」
決して広いとは言えない入場口を共に入る面々を見て来夢は、不安を隠せなかった。
「どうした。珍しくテンションが低いな」
そう言って歩調を合わせてきたのは、今日行動を共にする三人の内の一人。
みんなで出かけようという提案をした張本人。言わずと知れた神代司だった。
「デートなんだからもっと楽しそうにしろ」
そうなのである。これはデート。
前を歩く高見沢と弓長の教師カップルと共に、司と来夢の凸凹カップルが一日を過ごすというダブルデートなのだった。
だから一応可愛い服を選んで着たし、普段はしない化粧もうっすらだが頑張ってしてみた。
それなのに司は、
「腹でも痛いのか」
と、ムードもへったくれもないポーカーフェイス平常運転。
高見沢たちと違い、来夢と司が本物の恋人同士ではないのは分かってはいるが、これで果たして男女のデートというものが成り立つのか。
来夢は不安、そして不満であった。
そもそもどうしてこなったのかと言うと、話は数日前に遡る。