カランカラン。
乾いた音を立てる扉を抜けると、たくさんのぬいぐるみたちを後目に蒼士は奥にあるテーブルについた。


「お待たせ」


前のイスにはこの店の主である司と、複数のあやかしなごりを持つ少女、来夢が肩を並べて座っている。


「来たか」


「お疲れさまです」


司は相変わらずの無愛想顔で、来夢は笑顔で迎えてくれた。

あの日から三日が経っていた。

事後処理で忙しく、中々顔を出せなかったが、今日やっと事件の報告をしにやってきたのだ。


「それで、どうなったんですか」


さっそくとばかりに来夢が身を乗り出す。


「響子さん、重い罪になっちゃうんですか」


「う~ん、それがね」


あの日、副所長室で司に銃を取り上げられた響子は、蒼士が逮捕した。
罪状は窃盗と殺人未遂。


なのだが……。


「え!? 軽い罪で済むんですか」


「そう、窃盗に関しては本人が隠し持っていた物と自供で多少の罪にはなった
けど、殺人未遂の方は無罪。というか最初からなにもなかったということになったんだ。本人は罪を認めているんだけどね」


銃は暴発ということで事件事態がうやむやに処理されることになった。
それというのも、


「本城さん、怒ってないんですか」


正にそれであった。


「怒るどころか、すべて本城警視が強権を発動したおかげなんだよね」


「どういうことですか?」


「動機が不十分過ぎるって。あやかしの血に強制されて殺すなんてありえないって。しかも勘違いで」


「ああ、それでですか」


そう、実は勘違いなのだ。
響子が本城を殺す理由なんてなんてはじめから存在しなかったのだ。
すべては中田が説明してくれていた。
あちこちで物が紛失し警察署中がパニックになった時、柚葉を捜して会議室へやってきた中田が。