――小学生の頃の卒業アルバムを探し始めて、十五分後。

「佐奈、見つかったよー!」紅羽が大声を上げた。

「えっ! どこにあったの?」私も思わず大声を出してしまう。

「洋服ダンスの服の下にあったよ。……まるでエロ本を隠すみたいに」

紅羽は卒業アルバムを私に手渡すと腹を抱えてしゃがみ込み、笑い始めた。

「なんでそんなところにあったんだろう? ……私がそこに入れたのかな?」

私はまるで未知なる生物に遭遇した時のように驚く。

「私に聞かれても分からないけど、多分そうなんじゃない? 紅羽の部屋なんだから」

「まあ、……そうだね」私は軽く頷いた。

私はなんだかムズムズとした気持ちになった。

洋服のタンスの中に卒業アルバムを入れた覚えはないからだ。

……きつねにつままれるような思いというのは、こういう気持ちなんだろうなと私は思った。
 

「佐奈って六年何組だったのー?」

紅羽は床にあぐらをかいて座り、卒業アルバムをめくりながら言う。

「……何組だったか覚えてないな、ごめんね」

私は床に正座で座りながら、開かれる卒業アルバムを遠目で見ていた。

なんだか心がそわそわとして、落ち着かない。

「大丈夫だよ! 一組から順に一人ずつ顔と名前を見ていけばいいんだから」

紅羽がそういって、一組の一番から順に顔写真を指差して確認していく。

「…………」

私は紅羽が小学生の時の顔写真を探している間、なにをすることもなく黙ってその作業を見ていた。

なんだか、体や心の調子がおかしくなっているような感じがした。

心の内側からなにかが剥がれだしそうな感覚がして、胃がキリキリとし始め、お腹が痛くなり、吐き気のようなものまで襲ってきた。

得体のしれないなにかが、私の体を飲み込んでしまうような感じがした。

――なんだこの感覚は、私の体は一体どうなっているんだ?

「佐奈、どうしたの? 大丈夫? なんだか顔色が悪いよ」

「大丈夫、……じゃないかも。なんだか具合がもの凄く悪い」

私は自分の手を確認した。手はなぜか震えていた。

なんで? どうして? 風邪でも引いたのかな?

「……なるほどね。なんとなくそうだとは思っていたけど、やっぱり原因は『ここ』にあったのか」

紅羽がゆっくりと瞬きをして、なにやら意味深なことを言う。

「紅羽それは一体どういうこと?」

私は紅羽に質問する。言っている意味が全く理解できないからだ。

原因はここってなに? ……なんの原因? その原因でなにが起こっているの?