僕は、顔を上げた。
目の前に、
似合わない無精髭を生やしながらも変わらないたおやかな笑顔で微笑んでいる黒ジャケットの彼が立っていた。少しだけ瘠せたように見えた。

「どこにいても、羅針盤の針はいつも君を向くんだ」
そう言って、

彼は僕を見つめ、とても幸せそうに微笑った。


2025.10.09
Mika Aoi 蒼井深可