そういえば、山田は羽田に挨拶する事もなく三日前に引っ越している。
どこに行ったのか、少し気になっていたのだが……。
「まさか、ここて右目をえぐりとったのですか?」
「そうです。彼は、被験者に過ぎません。実験は成功したんです。祖父の話した事が真実だと立証されたんです。山田さんには用はありません。あの人の体は野犬が食いつくしていて、もう跡形もありません」
もう少し分かるように言ってくれないか。いや、真実など分かりたくないような気する。
ザワザワというどよめきと共に口の中が苦くなる。
「まさか、オレも殺すつもりなのか?」
「いいえ。まさか」
村上の穏やかな微笑にホッとする。
「いや、そんな事よりも沙織を助けてやってくれ」
以前、通学中の目の見えない妹を拉致して乱暴しようとした奴がいた。
幸い、近くにいたおばさんが気付いて注意してくれたから良かったのだが、この先も色々な危険が付きまとう。子供の頃、お化け屋敷で泣いていた。あんなにも暗闇を恐れていた沙織を救い出してやりたい。
「沙織を救いたい。オレはどうなってもいい。だから、頼むよ」
村上が、スッとスマホを差し出した。
「これを見てもらえますか。実は、僕と沙織は半年前から真剣に付き合っているんです」
写真の中の二人はピッタリと寄り添ったまま、広々とした紫色のラベンダー畑を背にして微笑んでいる。
(えっ、沙織が、こんなにも幸せそうに笑っている……)
チクリと刺すような痛みを感じながらも、これでいいのだ。きっと、村上は沙織の目を治してくれる。
「あの子は移植手術を了承しました。成功しても見えないフリをしてくれると約束してくれました。でも、人魚のことは沙織には秘密にしなければなりません」
どこに行ったのか、少し気になっていたのだが……。
「まさか、ここて右目をえぐりとったのですか?」
「そうです。彼は、被験者に過ぎません。実験は成功したんです。祖父の話した事が真実だと立証されたんです。山田さんには用はありません。あの人の体は野犬が食いつくしていて、もう跡形もありません」
もう少し分かるように言ってくれないか。いや、真実など分かりたくないような気する。
ザワザワというどよめきと共に口の中が苦くなる。
「まさか、オレも殺すつもりなのか?」
「いいえ。まさか」
村上の穏やかな微笑にホッとする。
「いや、そんな事よりも沙織を助けてやってくれ」
以前、通学中の目の見えない妹を拉致して乱暴しようとした奴がいた。
幸い、近くにいたおばさんが気付いて注意してくれたから良かったのだが、この先も色々な危険が付きまとう。子供の頃、お化け屋敷で泣いていた。あんなにも暗闇を恐れていた沙織を救い出してやりたい。
「沙織を救いたい。オレはどうなってもいい。だから、頼むよ」
村上が、スッとスマホを差し出した。
「これを見てもらえますか。実は、僕と沙織は半年前から真剣に付き合っているんです」
写真の中の二人はピッタリと寄り添ったまま、広々とした紫色のラベンダー畑を背にして微笑んでいる。
(えっ、沙織が、こんなにも幸せそうに笑っている……)
チクリと刺すような痛みを感じながらも、これでいいのだ。きっと、村上は沙織の目を治してくれる。
「あの子は移植手術を了承しました。成功しても見えないフリをしてくれると約束してくれました。でも、人魚のことは沙織には秘密にしなければなりません」
