(まえ)にも()いたように、ドローイングは「引水舞(ひきみずまい)」という伝統文化(でんとうぶんか)をもとにして考えられたスポーツなんだ。
今回(こんかい)はその引水舞について紹介(しょうかい)していくよ。
ドローイングとのちがいについてもかんがえてみよう。

引水舞は6人の舞手(まいて)によっておこなわれるよ。
舞手はそれぞれ水色(みずいろ)桃色(ももいろ)といったきれいな色の法被(はっぴ)をきるんだ。
その上に細帯(ほそおび)をまき、帯に豆絞(まめしぼ)りをかけるよ。(この帯と豆絞りがドローイングのタグベルトのもとになったよ!)
舞手のうち一人が竹でできた小さなかごを背負い、その中に(じゅく)したくだもの((かき)柘榴(ざくろ))をひとつ入れるよ。かごを背負った舞手は「かごもち」といって、これがドローイングのボーラーのような役割(やくわり)だよ。

舞がはじまると、ドローイングとおなじように、「かごもち」は他の舞手の豆絞りをひきぬこうとするよ。他の舞手はかごもちのかごからくだものをとろうとするよ。豆絞りがとられてしまった舞手はそのばでじめんにてをついて降参(こうさん)するんだ。
ぎゃくにかごもちはくだものをとられてしまったときに次の舞手と交代するよ。6人の舞手みんながかごもちをやりおわるまでこれをくりかえすんだ。

舞がおわったら、6人が(えん)になって、かごもちをしたときにいちばんたくさん豆絞りをとった舞手のことをみんなでたたえるよ。地域(ちいき)の神さまに仲直(なかなお)りするところを見せるのがとても大事(だいじ)だから、ここまでが引水舞の手順(てじゅん)に入っているんだ。
いちばん豆絞りをとった人いがいの5人で(こえ)()わせてこんなことをいうんだよ。ちょっとながいけど、この(かみ)をみながらよんでみよう!

「かけまくもかしこき/いろかねやまにすまう/いろかねのおおかみ、このところに/さぶらうものこそ、このむらひとつの/びじょうふにはべりたてまつる。こたびこのむらこのところを/ちよのやどころの/うまきやどころとたてまつりて、こいねがわくは/きよらなるみずをもたらせたまえ/ときこしめせとまおす。」

「いろかねさま」という地域の神さまが、(むら)のみんなにたたえられるすばらしい若者(わかもの)を見にきたあと、村の人々(ひとびと)がなかよくしているようすを見て、(うつく)しい水を村にはこんでくれるようになる、といういいつたえがあるんだ。このことばも、そのいいつたえとおなじことをいろかねさまによびかけるようないみになっているよ。

じっさいに舞がおこなわれるときは、舞手いがいの村のみんなでたいこやかねをたたいたり、ふえをふいたりしていたよ。むかしは伊呂金のめいぶつとしてたくさんの人が見にくる行事(ぎょうじ)だったんだ。舞手はみんなそんななかで「村一つの美丈夫(びじょうふ)」になるためにがんばっていたんだよ。


ちょっと一言
かつて伊呂金神社秋祭りにて演舞されていた引水舞ですが、現在は残念ながら中止されてしまっています。
伊呂金文化振興会は演舞の際に用いられていた衣装や道具をそのまま保管しており、ただ形として後世に残すだけではなく、いつでも再び使うことが出来るように随時保全作業も実施しています。
ドローイング用の器具だけでなく、こちらの貸し出しについてもご相談に応じますので、伊呂金文化の継承にご興味のある方はぜひご一報ください。