当社所有伊呂金山採鉱場は年間20万t超の産出量を誇る国内最大、世界でも有数のクロム鉱山であり、本採鉱場でのクロム鉱石採掘は、言うまでもなく当社の最重要事業である。
本採鉱場は非常に良質のクロマイト鉱石を産出することでも名高く、鉱石中のクロム含有率は世界的にも類を見ない高水準である。

また、クロムはメッキ用途や合金用途など、非常に産業上重要度が高いレアメタルの一つである。
我々が製造したクロムは戦前・戦後にかけて日本国の近代化を強力に後押ししたばかりでなく、現代でも我が国の産業を幅広く支えている。扱いやすさと耐食性に優れるクロムは、生活に身近な分野から最先端の工業的分野まで幅広い領域で欠かせない金属となっている。
同様に産業上重要度が高く、合金やメッキなどに用される非鉄金属であるモリブデンやニッケルは日本国内ではほとんど産出されておらず、他国からの輸入にほぼ全量を頼る状況にある。

このような状況から生ずる国際安全保障上の懸念から、それらの鉱物資源に関しては、国内消費量の60日分以上を国家備蓄するよう法令によって定められている。いわば、これらレアメタルの供給構造は日本国の国防上のアキレス腱ともいえる。
こうした中、クロムに限っては国内消費量のおよそ4割程度を自給できており、こうした対応が不要となっている。また、戦略資源となり得る金属に関して、多くの量を国内で調達可能であることの意義は、単なる自給率という数字以上に大きい。
国内で産出されるクロムは1995年以降この伊呂金山由来のものが全量を占めており、これはすなわち国際社会における日本の立ち位置を決める柱の一本を我々が支えていると言って全く過言ではない。

万が一伊呂金山採鉱場が長期にわたって操業を停止するようなことがあれば、日本国はクロム消費量のすべてを他国から輸入することになり、外交上の重要な交渉材料を失うばかりでなく、資源産出国に交渉の主導権を握られることになる。昨今の国際情勢を鑑みるに、そのような状況はなんとしても避けねばならない事態であることは言うまでもない。

加えて言えば、20万t超という産出量は、単独鉱山からのものとしては世界でも有数の規模にある。層状鉱床に比して安定的な採掘の継続に要求される技術的要件が高いポディフォーム鉱床を持つ鉱山としては異例といってよい。
一般にポディフォーム鉱床から産出される高クロム鉱石は鉱石中のクロム含有率が高い傾向にあるが、伊呂金山より産出する鉱石はCr2O3>61%とその中でも際立って高品質である。
然るに伊呂金山採鉱場は世界的に見ても質・量の双方をトップクラスの水準で兼ね備えたクロム鉱山であると言え、世界におけるクロムの供給構造においても非常に重要な位置を占めている。世界情勢のバランスを鑑みても、本鉱山が操業停止するような事態になることによって世界工業に与える打撃は計り知れないほど大きなものとなる。

このような状況から、当社による伊呂金山のクロム採掘事業は、社会への貢献が極めて大きな活動であり、何をおいても採掘を継続することが求められる産業上きわめて重要な事業であるといえる。