広島県芦口市伊呂金町に位置する伊呂金山は、標高647mの風光明媚な秀峰であり、鎌倉時代の文書には既にその名前で記録が登場するなど、古くから人と歴史を育んできた山でもあります。
地表面に赤や緑の鉱石や金属質の物質が混ざった岩盤が露出していることが古来より知られており、そうした特徴が「いろかねやま」という山名の由来となったとも考えられています。

日本国内では非常に珍しいクロム鉱山として知られており、現在に至るまで弊社が採掘を継続しています。
伊呂金山採鉱場の年間クロム産出量は20万t超を誇り、これは現在の日本国において産出量の全量を占めています。また、単独鉱山からの産出量としては世界的に見ても有数の規模であり、産業において様々な用途に利用されるレアメタルであるクロムの供給構造の重要な部分を占める立場にあります。
加えて、伊呂金山より算出されるクロマイト鉱石(クロム鉄鉱石)は非常にクロムの含有率が高いことでもよく知られています。伊呂金採鉱場は、量・質双方の面で世界に名を轟かせる一大産地なのです。
また、山名の由来からも分かる通り、クロムを含有する鉱物の多様さでも有名です。赤色を帯びたエメリー(コランダム)や緑色の灰クロム柘榴石といった色とりどりの鉱石が土壌中に豊富に存在しており、その一部は地表面からも確認することが可能です。(別添画像1,2参照※こちらの画像は動画中で素材としてご利用頂けます。)

伊呂金山南西の麓に本殿を構える伊呂金神社(芦口市伊呂金町大字吹上36)は、13世紀には文献に記録があり、当初は伊呂金山を信仰対象とする山岳信仰の拠点となっていました。16世紀ごろから地区内の人口の増加に合わせて神社としての性質を変化させてきましたが、伊呂金山に住まう神を祭神としているのは創建以来変わらず、現在も地域のお宮として町民に広く親しまれています。
また、この伊呂金神社は伊呂金文化について語る上では外せない重要史跡でもあります。中でも1990年代まで秋祭りの際に実施されていた「引水舞(ひきみずまい)」は伊呂金の名物としても知られた伝統行事で、芦口市文化遺産にも登録されています。演舞が実施されなくなってしまってからも保全活動は精力的に行われており、近年では引水舞をモチーフにしたニュースポーツ「ドローイング」も誕生するなど、あらゆる形でこの文化の継承が試みられています。

国道73号線沿いに位置する「道の駅 クロムの里いろかね」(大字高元16)では地元産農産物のほか、伊呂金山より産出した鉱石の原石及びそれらを利用した工芸品などが販売されています。休日には各種イベントも実施されており、大人から子供まで広く楽しめる施設になっています。
また、併設の伊呂金郷土資料館では、伊呂金鉱山より産出された直径60センチ余のクロマイト鉱石や上記のエメリー鉱、灰クロム柘榴石鉱など鉱物資源や、伊呂金神社に関する古文書、伊呂金町民の文化や習俗などを記録した資料などを多数収蔵・展示しています。伊呂金町へお越しの際はぜひお立ち寄りください。