冒険者の証(プルーフ・リング)を受け取り、冒険者登録の手続きを終えた僕達は、騎士団本部へと向かっていた。
 騎士団本部へと続く道は行き交う人々で入り交じり、学生らしき人達もチラホラと見かける。
 それは騎士団本部の近くに、『神英学園』と言う学校があるからなのだが、滅茶苦茶視線が痛い……。

『ねー、あの人イケメンじゃない?』

『いやそれな? 分かるー!』

『しかもさ、神姫様と私服デートってヤバくない?』

『うん、ヤバい! 服が神姫様のシャツなのもヤバい!』

 JKっぽい黄色い声が聞こえてくれば。

『きいいいいいいい! 拙者の嫁であるエマたんとデデデデートをするなんて許せないでござる!』

『ブヒヒ、本当に許せないブヒね。あんな良い漢、ワイが寝取ってやるブヒヒ』

『オタクは引っ込んでろキーーック!!』

『『うわああああああ!!!』』

 大道芸が聞こえてきた。
 
 この世界さぁ……ポモガキ多くない?
 ん? ポモ、ガキ……?
 あっあっあっあっあっ…………みっ。

 どうやら僕は多様的過ぎるこの異世界で、あのトラウマを忘れられそうに無いらしい。
 そのことにドンヨリしつつ、隣を毅然とした様子で歩いているエマに、気になっていたことを聞くことにした。

「そう言えばさ、エマさん。僕のステータスってさ、そんなに普通なの?」

 ずっとステータスについて気になっていたのだ。
 
 だってさゲームやラノベなら、異世界転生したときってステータス最強!って感じになるんじゃないの?
 それがどうだ? 僕、普通らしいぞ。

 そんな、何処か肩透かしを食らっている僕に対し、風に綺麗な白髪を靡かせているエマは、苦笑いを浮かべる。

「ハハハ……まぁ、普通ではあるな。でもアレだ、常人よりも足が、二倍くらい早くはある」

 常人よりも足が、二倍くらい早い……か。
 確かに僕、昔から足が早かったんだよな。
 五十メートル走も、四秒台だったし……。
 でもそれだと、常人の五十メートル走って、単純計算で大体八秒台になるけど……。
 異世界の人なのに、まるで前の世界の人みたいだ。
 そもそも常人のステータスって、数値で言うとどれくらいなのだろうか。──気になる。

「ねぇ、エマさん」

「ん? なんだ?」

「常人のステータスって、数値で言うと、どれくらいが平均なんですか?」

「常人は大概、レベル一で生まれ、その平均ステータスは三であることが多いな」

「えっ、そうなの……? 僕のステータス、平均二だった様な気がするけど……」
 
 ・・・でもまぁ、そりゃそうか。
 だって僕、戦いとは無縁の世界で生まれたし……。

「まぁ、とは言えだ。そもそもステータスとは、そのレベルで出せる最大値のことを言う。だからこそ幾らステータスが高くとも、それを使いこなせるだけの技量がなければステータスなど、無いのと道理だ」

 これは、僕のことを慰めてくれているのだろうか?

「そ、そうですか……」

「あぁ……それにレベルが上がれば、ハルトのステータスも上がるし。そもそも、ハルトはステータスなど無くとも私を助けてくれたでは無いか。あのときは何だ……格好良かったぞ、ハルト……」

 僕のことを横目に、照れながら言ったエマ。
 そんなエマは白のワンピースという、ラフな格好をしているからだろうか。──凄く、輝いて見えた。

「うへへ……そう言われて元気が出ました!!」

「そうか……それなら、良かった」

「はいっ! ・・・あっ、そうだ。エマさんのプルーフ・リングって、何処にあるんですか?」

 そう言えばそうだ。
 エマはプルーフ・リングを身に付けて居ない。
 ダンジョンに入るには必要な筈なのだが、これは、どう言うことだろうか?

「あぁ、それはだな。私の、と言うか……私達騎士団のプルーフ・リングは、神器へと変わっているな」

 騎士団のプルーフ・リングは……?
 神器へと、変わっている……?

「えっ……神器って、プルーフ・リングから出来てる物だったの!?」

「まぁな。ハルトのが特別なのだ。しかし私は、神器へと変化した人を数人しか知らない」

「もしかしてそれが……」

「あぁ、私の仲間だ」

 やっぱり、あの人達凄い人達だったんだ……。
 そりゃそうだよね……オーラが凄かったもん。

「すげぇ……」

 そう、感銘を零した。
 すると、エマが言葉を紡ぐ。

「そうだろう? しかし、それもその筈だ。何故なら人々は、神器のことをこう呼ぶのだから」

 ──選ばれし英雄の武器、と。

 騎士団本部への道すがら。
 そんな会話をしていた僕達は、何時の間にか目的地である騎士団本部へと、着いていたのであった。