俯く僕は、流涕(りゅうてい)し。
 瞳に映る地面が、ボヤけて見える。

 僕。今日は何か、泣いてばっかだな……。
 早く、この不甲斐ない涙を止めないと……。
 じゃなきゃ、頼りないって思われちゃうよ。

 辺りには、啜りが鳴り響く。
 そんな静寂の中で僕は、彼女のことを見ていた。

(こんなカッコ悪い姿。絶対に見せたく無いなぁ……)

 何故かは分からないけど、一目惚れした彼女。
 そんな彼女の寝顔は、見ているだけで愛おしくて。
 この世界に転生して良かったと、そう思えたし。
 そう思えてしまうくらいに好きだから、泣いてるなんて情けない姿は見せたく無いのだ。

 嬉しくて溢れる感情に、男の性とも言える感情。
 それらがグツグツと心で煮だっていると、辺りからアタフタとした声が聞こえてきた。

「えっ? ちょっ、何泣いてるんすか!? あぁっ、ヘファイストスさんっ、プロメテウス! こーゆーとき、どどどどどどーすれば良いんすか!!??」
 
 それは、アキレウスの声で……。
 アキレウスは僕の手を握りながら、隣に居るヘファイストスさんと、不死鳥系女の子(プロメテウス)を交互に見た。

「あーあ。副団長が泣かせちゃったぁ」

「えっ?! 俺が悪いんすかコレ!?」

 アキレウスは手を離し、大振りで驚愕した。

「アキレウスよ。過ちはのお……正してこそ、未来に生きていくものじゃよ」

「ヘファイストスさんまでっすか!!??」

 揶揄われているアキレウス。
 その慌て様が面白くて……クスッ
 
「ハハハハハハハハハッッ!!!!」

 思わず、吹き出してしまった。
 こんなに笑ったのは、一体何時ぶりだろう。
 あぁ……全然覚えてないや。
 でも覚えてなくても良いんだよ、きっと。
 だってさ、──現在(いま)笑えているんだから。

 僕が盛大に笑っているとき。
 アキレウスは、目を点にしながら唖然としてて。他の二人はニコリと、優しく微笑んでいた。

「ハァ……久しぶりに、こんなに笑ったよ。心配してくれてありがとうね」

「なら良かったよ。ね? アキレウス」

「う、うん? そっ、そうっすね?」

「ふぉっふぉっふぉっ! アキレウスは、素直で良い子じゃからのお!!」

 アキレウスの頭を、ヘファイストスさんが撫でた。
 それに対してアキレウスは、何処か、満更でも無い様子で照れている。
 そんな、お父さんみたいなヘファイストスさんは、僕のことを再度見ると、優しく提言してくれた。
 
「おっと……それはそうとしてお主。もっと、楽に座って良いんじゃぞ?」

 そう言えば僕、ずっと跪いたままだった。
 確かに、地面についている方の左足が痛いし、ココは甘えさせて貰おう。

「はい、ありがとうございます」

 そう言って僕が座ると、ヘファイストスさんは満足そうな表情を浮かべた。

「無理をすることは無いわい、それで良いんじゃよ」

 ニコリと顔を綻ばせた、ヘファイストスさん。
 そんな、僕とヘファイストスさんの会話が終わると、プロメテウスが口を開き話題を変える。

「そー言えばさ。ボク達の方は、誰一人として自己紹介して無かったよね」

「「「確かに……」」」