👢 3 👢

「今日は暖かいからブーツは合わないんじゃないの?」

 ご主人のお母さんの声だった。

「そうね。今日は別の靴にした方がいいかな……」

 ご主人は悩んでいるようだった。
 わたしは一気に不安になった。
 居ても立ってもいられなくなって扉を見つめていると、いきなり開いて、彼女の手が伸びてきた。
 
 わたしを選んで! 
 
 声を限りに叫んだ。
 でも、その願いは叶わなかった。
 わたしじゃない靴を、わたしの上の棚のハイヒールを掴んだのだ。
 
「ご愁傷様」

 そのハイヒールはわたしを憐れむように一瞥して、靴箱から出て行った。

 あ~あ、今日は一日中靴箱の中か……、
 
 ため息が出るだけでなく、思い切り落ち込んだ。
 ジェンを探すチャンスが無くなったからだ。
 暗い靴箱の中で泣きながら次の日が来るのを待つしかなかった。