ジェンと離れ離れになって2日後、わたしのご主人が迎えに来た。

「まあ、綺麗に直って」

 ご主人はピンヒールの根元を見て大きく目を見開いた。
 そして、「一番好きなブーツなんです。本当にありがとうございました」と飛び切りの笑顔で職人に礼を言った。
 それから、お洒落な紙袋にわたしをそう~っと入れて、気分良さそうに鼻唄を歌いながら、家に連れて帰ってくれた。
 
 その後は毎日のようにご主人に履かれて、家と会社を往復した。
 わたしはその度にジェンを探した。
 近所なんだから絶対会えるってジェンが言ったから、わたしは必死になって探した。
 道路で、
 交差点で、
 バス停で、
 駅のホームで、
 電車の中で。
 でも、ジェンに会うことはなかった。
 何日経っても、
 何週間経っても……、