夜が明けたようだ。
 見つめていると光は次第に強くなり、スポットライトのようにわたしを映し出した。
 すると、「綺麗だな~」と紳士用ブーツがわたしを見て呟いた。
 
 綺麗って……、

「お前の色、俺好きだよ。なんていう色なんだ?」

「オレンジ系のヴィヴィッド・トーン」

「オレンジ系のヴィヴィッドか……。なあ、お前のこと『ヴィヴィ』って呼んでもいいか?」

 えっ? 
 ヴィヴィ? 
 えっ? 
 
 なんかドキンとした。
 
 もしかして、これって、トキメキ? 
 えっ? 
 女になっちゃったの? 
 確かに今は女性用ブーツだけど、
 その前は成人男子だったのに……、
 
「いいわよ。ヴィヴィって呼んで」

 あれっ? 
 甘えた声が出ている。
 どうしちゃったの? 
 それに、痛みがなくなっている。
 どうなっているの?
 
 訳がわからなくなって、動揺の海を泳いでいるような感じになった。
 自分が自分で無くなったようで、どうしていいかわからなくなった。
 それでも、確実に変化しているのを止めることはできなかった。
 女になることを止めることはできないのだ。
 わたしは動揺しながらも変化を受け入れることにした。
 それでいいんだ、と自らに言い聞かせた。
 すると、またもや甘えた声が口から飛び出した。
 
「ねえ、あなたのこと『ジェン』と呼んでもいい?」

「ジェン?」

「そう、ジェントルマンのジェンよ」

 彼は嬉しそうに頷いたあと、甘い声で囁いた。
 
「ヴィヴィ」

「なあに、ジェン」

 わたしはジェンに体を寄せた。
 ピッタリと体を寄せた。
 彼のぬくもりを感じながら瞼を閉じると、夢の世界に入るのに時間はかからなかった。