「未早、元気出せよ。俺もその先輩捜してやっから」
「サンキュー。お前優しいな」
願いも虚しく、方を竦めて檀上を見上げた。
「でも大丈夫だよ。俺が早とちりっていうか、考えなさすぎたんだ。全部忘れて、部活と勉強だけに専念するよ」
嘘だ。
部活オンリーです。勉強なんて全くする気ないけど、あまりに情けないからそう言っといた。
「未早は真面目だな!」
リョウは騙されて俺に感心してる。すまんね。
「では最後に、生徒会から一年生へ連絡です」
最後に前のステージに出てきたのは生徒会だった。
そこで俺は自分の目を疑う。前で話す生徒会長の隣にいたのは、

「紅本先輩……!」

鼓動が速まる。間違いなく、俺が捜していた初恋の人、紅本先輩だった。
「す、すいません、あの人って……」
興奮のあまり、気が付けば近くにいた放送部の三年生に話しかけていた。
「あぁ。紅本? 生徒会の副会長だよ」
「あの、何の部活に所属してますか?」
尋ねると、彼は隣にいた三年生を呼んで首を傾げる。
「おーい、紅本って何か部活入ってた?」
「え? 多分帰宅部だよ。何で?」
帰宅部。マジか。
「すいません、ありがとうございます」
軽く頭を下げて、他の生徒に紛れて体育館を出た。
彼が帰宅部だとは……それも俺の中では相当な驚きだったけど、良かった。
この学校にいた……。

「未早ー! 急にいなくなったからビックリしたぜ。もしかしてお目当ての先輩見つかった?」
「あぁ。ありがとう」

リョウに彼が生徒会にいることを話すと、
「へ~! じゃあ生徒会に入れば良いじゃん。一年でも有志の役員とか募集してんじゃない?」
「あぁ。でも……」
生徒会か。何となくしんどい。活動もいつもあるわけじゃないし、入っても先輩と関わる機会なんてないかもしれない。
あまり乗り気じゃないのが伝わったのか、リョウの目つきが鋭くなった。

「……未早。お前その先輩に会うためだけにわざわざこの学校を受験したんだろ。なら最後まで貫けよ。何も行動しないで後悔したとき、全部その先輩のせいにする気か?」
「リョウ……」

突然のイケメン発言に驚かざるを得ない。何なんだよ、何がスイッチなんだ。

「ここまできたら腹くくって、嫌われんの覚悟でついてけよ。一緒にいられるのはたった一年なんだし、もし何かあってもすぐに卒業しちゃうから大丈夫だろ?」
「そう……だな。……うん、お前の言うとおりだわ。サンキュー、俺頑張れそう」
「頑張れよ。俺もガチで協力するからジュース奢って」

リョウに鼓舞されて、紅本先輩に会いに行く覚悟を決めた。何かジュース奢れとか聞こえたけど、多分気のせいだ。

放課後、俺は紅本先輩がいる教室へひとりで行くことにした。