昨日と同じ時間。陽が高いうちから、自分達はいけないことをしようとしていた。

「湊、もっとこっちおいで」

ゆっくりシャツをはだけさせて、肩を抱き寄せてくる。
でも嫌じゃない。恥ずかしいけど、彼の体温を近くに感じられるのは……気持ち良い。
唇を重ねると、さらに熱くなった。
「その……怖いから、酷くしないで……」
呼吸を整えても辛い。指一本で、情けないけど身体は従順になってる。

「酷いことはしないよ。怖がんないで」

そう言ってから、日戸は自分の言葉に苦笑した。


うーん。
怖がんないで、ってのも俺らしくないけど。

……「酷くしないで」なんて。

ずいぶん可愛いことを言えるようになったな、湊は。

中を激しく掻き回す、彼の指。痛いけど求めてしまう。
湊は必死に言葉を紡いだ。
「湊」
「だい……じょうぶ……」
心配そうな顔をしないでほしい。こっちまで、何か変な気持ちになるから。

手を伸ばして、彼の頬に触れた。初めての感覚に胸が熱くなっていると、むしろ彼の方が体重をかけて覆い被さってきた。
形勢逆転され、可愛い彼の顔を見上げる。
「湊、随分積極的になったね」
宙に浮かした手を逆に掴まれる。とても細くて華奢な手だったけど、見惚れてしまった。

何の根拠もないけど、きっと何とかなる。
────彼となら。

深く息を吸った後、彼の身体を貫いた。

湊は涙を浮かべながら、日戸に縋りつく。
乱れた湊を目の当たりにし、日戸は舌なめずりした。
気持ち良い。プライドなんか粉々に砕けて、壊される。
気付けば、湊は自分を手放していた。

「気持ち良かった?」
日戸の甘い囁きに、躊躇いなく頷く。

「次はお前な」
また手を伸ばすと、彼は優しく握ってきた。
「ありがと」
そして、激しい律動の後。
自分の中で広がる感覚。

日戸が達したんだと、すぐに分かった。


このままこうしていたい。家に帰らず、学校にも行かず、夜も眠らず、朝も目覚めず。深海に潜っていった魚のように、このまま闇に溺れたい。なんて不覚にも思ってしまった。

「湊、回好きって言って」
「は」

寝たかと思ったのに、彼はまた変な要望を出してきた。
「ね。それで今日は最後」
「なんだよソレ。毎日言わないといけないのかよ」「お望みなら毎日でも」
何でそう、バカップルみたいな日課をしなきゃならんのか。
理解不能だけど、そんな彼に惹かれてる自分がいる。
「……好き。これで良い?」
「うーん。やっぱり大好きって言って」
何かもう、ぶっ飛ばしたい。

「……大好き!」

半ギレで言うと、日戸は何故か赤くなって顔を逸らした。そこで照れられても困る。
「はぁ~。そっか、そんなに俺が好きで堪らないか。もちろん俺も俺が大好きだからミートゥーだけど」
「何がしたいんだよ」
呆れつつ身体を起こして、彼の肩を押した。自分の世界から帰って来てほしくて。

「うん、何回でも好きって言って。どうせこれからもっと好きになると思うけど」
「ナルシスト」
自信家って言った方が良いのかな。
不敵な笑みで、彼は自分を落としにかかる。

「本当だよ? まだ湊は俺のこと全然知らないもん」

重なる手が凄く温かい。
胸や顔に限っては熱が篭ってるみたいな熱さだ。
「これからたくさん、目に焼き付かせて……教えるから。湊も自分のことを、もっと俺に教えて。隠さないで」
「……」
彼の低い声が耳に響く。
何でこんな、色っぽいと感じてしまうんだろう。
病気かって思うぐらい彼にハマってる。
「秘密は駄目だからね。OK?」
「……ハイハイ」
それでも良い。
ただ、怖いぐらい幸せだった。