「マルさん、夏月のことずい分心配しててくれたんだね」
『まあ……、相棒だから、じゃない』
本当はそれだけじゃない、そうじゃない。
屋上で出会った時に、きっと互いのことが理解できたからだ。
抱えていたこと、吐き出せない思い、飲み込んでしまう癖が同じだったから、マルと友達になった。
でも私とマルだけの秘密だから、それは春陽には言わない。
「絶対彼氏だと思ったんだけどなあ」
『んなわけないじゃん!』
「本当に? マルさん、結構イケメンじゃない?」
まあ、イケメンの部類には入るが、彼氏ではない。
残念がる春陽だけど、そこは強く否定しておこう、マルの名誉のためにも。
だってマルの好きな女の子のタイプを知っているんだもん。
華奢で色白でちょっとドジそうな雰囲気のアイドルのこと、推してるの知ってたし。
そういえば、あのアイドルの雰囲気がちょっと春陽に似てるなって思ったこともあった。
家が近づくに連れて人影もまばらとなり、春陽の口数も増えてくる。
人混みで私に話しかけていたら、ヤバイ人だって思われかねないからアイコンタクトや小声を通していたけれど、ここら辺りまで来るとその警戒もとけはじめたようだ。
「それにしても、言って欲しかったよ。Harukaのこと」
『やだよ、恥ずかしいもん』
「なんで? 私だって夏月の歌聞きたかったのに」
『聞いてたじゃん、何度も』
「だって、あれはカラオケでしょ? 配信で歌えるなんてすごいよ、夏月! 声がすごくキレイだった」
『春陽、自画自賛してんの? 同じ歌声のくせに』
「それはまあ、声はそうかもだけど……、私は夏月みたいに想いを込めて歌ったことないから」
寂しそうにつぶやいた春陽は、いつかのことを言っている気がした。
私も夏月と同じ部活に入りたかったな、って寂しそうに笑ってた日のことを不意に思いだす。
『ねえ、春陽は』
言いかけた私の声に気づかなかったのか。
「明日も探そう、スマホ。夏月は嫌がるかもしれないけど、私は残したいよ? 夏月が最期に作った曲。聴いてみたい」
『待って、待って! それってスマホに電源入れようとしてるってこと?』
「あとは見ないようにするから! ね?」
『やだって、絶対ダメ! 湯船に一晩漬けこんで洗濯機で洗って、あとはハンマーでブッ叩いてよ』
「そこまでするの!?」
私の依頼に、呆れたように春陽が笑った時だった。
「春陽! 春陽!!」
見えてきた家の前には人影が二人。
ママを支えるようにするパパがいて、春陽と叫んだのはママだった。
『まあ……、相棒だから、じゃない』
本当はそれだけじゃない、そうじゃない。
屋上で出会った時に、きっと互いのことが理解できたからだ。
抱えていたこと、吐き出せない思い、飲み込んでしまう癖が同じだったから、マルと友達になった。
でも私とマルだけの秘密だから、それは春陽には言わない。
「絶対彼氏だと思ったんだけどなあ」
『んなわけないじゃん!』
「本当に? マルさん、結構イケメンじゃない?」
まあ、イケメンの部類には入るが、彼氏ではない。
残念がる春陽だけど、そこは強く否定しておこう、マルの名誉のためにも。
だってマルの好きな女の子のタイプを知っているんだもん。
華奢で色白でちょっとドジそうな雰囲気のアイドルのこと、推してるの知ってたし。
そういえば、あのアイドルの雰囲気がちょっと春陽に似てるなって思ったこともあった。
家が近づくに連れて人影もまばらとなり、春陽の口数も増えてくる。
人混みで私に話しかけていたら、ヤバイ人だって思われかねないからアイコンタクトや小声を通していたけれど、ここら辺りまで来るとその警戒もとけはじめたようだ。
「それにしても、言って欲しかったよ。Harukaのこと」
『やだよ、恥ずかしいもん』
「なんで? 私だって夏月の歌聞きたかったのに」
『聞いてたじゃん、何度も』
「だって、あれはカラオケでしょ? 配信で歌えるなんてすごいよ、夏月! 声がすごくキレイだった」
『春陽、自画自賛してんの? 同じ歌声のくせに』
「それはまあ、声はそうかもだけど……、私は夏月みたいに想いを込めて歌ったことないから」
寂しそうにつぶやいた春陽は、いつかのことを言っている気がした。
私も夏月と同じ部活に入りたかったな、って寂しそうに笑ってた日のことを不意に思いだす。
『ねえ、春陽は』
言いかけた私の声に気づかなかったのか。
「明日も探そう、スマホ。夏月は嫌がるかもしれないけど、私は残したいよ? 夏月が最期に作った曲。聴いてみたい」
『待って、待って! それってスマホに電源入れようとしてるってこと?』
「あとは見ないようにするから! ね?」
『やだって、絶対ダメ! 湯船に一晩漬けこんで洗濯機で洗って、あとはハンマーでブッ叩いてよ』
「そこまでするの!?」
私の依頼に、呆れたように春陽が笑った時だった。
「春陽! 春陽!!」
見えてきた家の前には人影が二人。
ママを支えるようにするパパがいて、春陽と叫んだのはママだった。