――ああ、私、死ぬんだな。

 いつの間にか、土砂降りだったはずの雨が止んでいた。
 遠ざかる意識の中で『まだ十六歳なのに』と、我が身に起こった出来事を呪う。
 なんで、こうなったんだっけ?
 異常に頭が痛い、息をするのが苦しい、もう指一本すら動かせないのがツライ。
 自分の意思で動かせるのは、瞼だけだった。
 地面に仰向けのまま、ゆっくりと瞬きをし、最期に見えたのは、厚い雲の切れ間から顔を覗かせた銀色の三日月。
 まるで『死神が手にしてる鎌』のように見えたんだってこと、春陽(あね)に伝えられる未来があったなら、笑ってくれたかな?
 きっと泣きながら『笑えないよ』って怒るのかも。
 会いたいよ、春陽(はるひ)――。
 最期に会いたかった。
 浮かんだ涙を瞼で閉じ込めるように目を瞑って、私は永遠に眠りについた。
 そのはずだった。

「なんで? ねえ、夏月(なつき)ってば」

 取り戻した意識の中で、春陽は本当に泣きながら怒っていた。
 亡骸になった私に向かって――。