一時間後、美緒は自室のベッドの端に朝陽と並んで座っていた。
部屋にいるのは二人だけ。姫子たちには遠慮してもらった。
リビングのテレビから笑い声がするので、バラエティー番組でも見ているのだろう。
「…………」
とうとう沈黙に耐えられなくなったらしく、
「……あの。ごめんな、世話をかけて」
こちらの顔色を窺いながら、朝陽は恐る恐るといった様子で言った。
「銀太から聞いた。おれのためにヨガクレに行って、アマネ様から水をもらったって。現世に戻った後は、ペットショップの閉店時間に間に合わないからって、全力疾走してくれたんだよな。美緒があんなに速いと思わなかったとか言ってたぞ」
「アマネ様からもらった水は有限だもの。うまく狐に飲ませるなら哺乳瓶は必要でしょう」
平坦な口調から怒りを推し量ったのか、朝陽が黙った。
「身体はもう大丈夫なの」
「……ああ。おかげさまで」
彼の頬が緩むのを見て、美緒は唇を噛んだ。
下手をすれば、この笑顔を永久に失うところだった。
「……アマネ様に聞いたの。もし朝陽くんが霊力をあげようとした相手が悪いあやかしだったら、逆に霊力を奪われて死んでたかもしれないって」
「そんな大げさな――」
「もう二度としないで」
笑い飛ばそうとした朝陽の言葉を遮って、強く見据える。
「アマネ様も言ってたよ。朝陽くんの行為は相談員としての仕事の範囲を超えてる、次に同じことをしたら相談員の地位を剥奪する、紐も返してもらうって。そんなの嫌でしょう? 銀太くんがやりたかった夢を叶えたいんでしょう? でも今回のことは銀太くんを悲しませたよ。わたしもなんで止めなかったんだろうって、凄く、凄く後悔したんだから」
視界が滲み、朝陽の顔がぼやけた。
部屋にいるのは二人だけ。姫子たちには遠慮してもらった。
リビングのテレビから笑い声がするので、バラエティー番組でも見ているのだろう。
「…………」
とうとう沈黙に耐えられなくなったらしく、
「……あの。ごめんな、世話をかけて」
こちらの顔色を窺いながら、朝陽は恐る恐るといった様子で言った。
「銀太から聞いた。おれのためにヨガクレに行って、アマネ様から水をもらったって。現世に戻った後は、ペットショップの閉店時間に間に合わないからって、全力疾走してくれたんだよな。美緒があんなに速いと思わなかったとか言ってたぞ」
「アマネ様からもらった水は有限だもの。うまく狐に飲ませるなら哺乳瓶は必要でしょう」
平坦な口調から怒りを推し量ったのか、朝陽が黙った。
「身体はもう大丈夫なの」
「……ああ。おかげさまで」
彼の頬が緩むのを見て、美緒は唇を噛んだ。
下手をすれば、この笑顔を永久に失うところだった。
「……アマネ様に聞いたの。もし朝陽くんが霊力をあげようとした相手が悪いあやかしだったら、逆に霊力を奪われて死んでたかもしれないって」
「そんな大げさな――」
「もう二度としないで」
笑い飛ばそうとした朝陽の言葉を遮って、強く見据える。
「アマネ様も言ってたよ。朝陽くんの行為は相談員としての仕事の範囲を超えてる、次に同じことをしたら相談員の地位を剥奪する、紐も返してもらうって。そんなの嫌でしょう? 銀太くんがやりたかった夢を叶えたいんでしょう? でも今回のことは銀太くんを悲しませたよ。わたしもなんで止めなかったんだろうって、凄く、凄く後悔したんだから」
視界が滲み、朝陽の顔がぼやけた。