篝に通されたのは、やはり初日と変わらぬ大広間だった。

 一段高い床の上に座すアマネは今日も大輪の花のように美しい。

 ただ座っているだけなのに、彼女から清浄な気が放たれ、部屋の空気が澄み渡っているのを感じる。

 まさにここは神域――神の住まう場所だ。

 跪きたくなる衝動を堪え、美緒は「お久しぶりでございます」と頭を下げた。

 顔を上げた拍子に、ふっと何かの香りが鼻を掠めた。
 香が焚かれているのか、得も言われぬ良い香りがする。

「用件はわかっておる。朝陽を回復させたいのであろう?」
「え、どうして」
 まだ何も言っていない。

「わらわは神じゃからの。なんでもお見通しじゃ」
 アマネは美緒を見て、次いで美緒の隣にいる銀太を見て、意味ありげに微笑んだ。

「?」
 笑みの意味を測りかねている間に、アマネの白い手がすっと横に滑り、傍らの小瓶を取り上げた。
 赤い紐が結ばれていることを除けば、なんの変哲もない、透明なガラス瓶である。