「こんにちは、先生。」

「お、神木さん。こんにちは。」

学校が終わり、1度家に帰ってから塾へ向かった優菜は、信号待ちをしている晴紀に駆け寄った。

「こんな所で会うなんてびっくりだねぇ。」

晴紀は笑いながら言った。

「そうですね。今日は遅めなんですね。」

「まぁね。本社に寄ってたからちょっと遅くなっちゃったんだよね。」

優菜は納得し、晴紀と一緒に塾へと向かった。


「お疲れ様でーす。」

晴紀が先に入り、優菜が後から入る。

「…あれ、授業まだだっけ。」

本来誰かいるはずの教室には誰も居ない。

「…いや、もう始まってるはずですけど。」

「え、生徒と講師どっちも不在な事ある??」

晴紀は急いでスマホを取り出す。

「このパソコン、触っていいですか?」

優菜は講師用のパソコンを指さす。

「あ〜…いいよ!ついでに連絡来てないか見てくれない?」

「そのつもりですよ。」

講師用のパソコンには、生徒からの連絡が届く様になっている。

優菜は晴紀から塾の仕組みを色々聞いていた為、操作もスムーズだった。

本来は聞いちゃいけない事があるけれど、と思いつつ、優菜は連絡が来てないか確認する。


「あっちゃぁ…講師は休みだね…。そっちはどう?」

「……こっちも休みの連絡、来てます。」

「そっか…ありがと。」

晴紀は鞄を置き、パソコンに向き合う。

今日は晴紀は忙しくなりそうだと判断し、優菜は無言で席へと向かった。