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「じゃあ球技大会はこれでいくとして、今日欠席の阿比留の競技をどれにするか誰か決めてくれ」


担任の先生がそういった瞬間考えるよりも体が動いた。立ち上がって黒板に向かう。
そして自分の名前の横に阿比留の名前を書いた。
その瞬間、教室中にブーイングの声があがる。


「なんでよりにもよってバスケに阿比留いれるんだよ、負けてえのか須崎!卓球にいれとけよ!」


「ちょっと小野寺、やっかいなのを卓球によこさないでよ、私たちだって一応勝ちにいってるんだからね」


小野寺のヤジが響き渡ったあと気の強そうな女子の対抗でくだらない言い合いがはじまった。いないところで厄介払いされてかわいそうに、阿比留。たかが球技大会なのに。

今日はなぜか学校を休んでいる阿比留。運が悪かったな、今日は球技大会の競技決めだっていうのに休むなんて同情するよ。とニヤリと笑った。


「いいスパイスになるかもしれないだろ?阿比留には秘めた才能があるかもしれない」


「あるわけねえだろ!あいつ体育の時まともに走れてもねえからな!」


「つべこべいうなよ。どちらにしろバスケは人数ギリギリなんだからもう1人いた方が安心だろ」


「不安要素加えてどうすんだよっ!」


「補欠でいれてるだけなんだからそんなに心配すんなよ、大丈夫だっていざとなればおれが教えっから」


というかそれが目的です。

なんてことは口が裂けても言えずチョークを置いて両手を払いながら俺は得意げに自分の席に戻った。

空席になっている阿比留の席。このこと、阿比留がしったらどんな顔をするんだろう。
前髪で隠れている瞳はどんな感情をみせるんだろうと考えた。なぜそんなことはがりが頭を巡るのかは分からない。


「なんで阿比留いれてんの、お前ら仲良かったっけ?」

左隣の山下が俺に顔を寄せてそう聞いてくる。俺は頬杖をついてすこし回答に戸惑った。仲、ねえ。


「さあ、知らね」


「いや、お前に聞いてんだけど」


まだ友達にすらなれていない。
ただの秘密の共有者だ。