「ねえ、君」



 それは突然の声だった。最初は私に話しかけているなんて思わなかったものだから、その声が自分自身に向けられたものだと理解するのに数秒の時間を要した。


 私は自分のことを至って普通の女子高生だと思う。可もなく不可もなく、物凄く地味なわけでもなければクラスの中心にいるような派手なタイプでもない。いたって普通の、どこにでもいる高校生のひとりだと思う。


 駅前のCDショップ。特別好きな歌手がいるわけでも欲しいCDがあったわけでもない。時間を潰す場所を探していただけで、別にどこだってよかった。駅内のマックだってよかったし、少し行った先にあるスタバだってよかった。

だから、ここで彼に出会ってしまったことは一種の運命と呼べるのかもしれない。



「......死ぬ気、ないよね?」



あまりに直球なその質問は、私が彼に目を合わせた途端、即座に降ってきた。バカバカしくて笑ってしまうだろう。初対面の女子高生に、二十歳を超えたオジサンが真剣な目をしてそんなことを言ったのだから。

周りにいるただ好きなアーティストのCDを買いに来ただけの客だって、かったるそうに働く店員だって、一体どうしたものかと思ったに違いない。


けれど私はその言葉に何も返すことができなかった。薄暗く曇った彼の瞳に映った自分の目もまた、同じ様にグレーで塗りつぶされていることを知ったから。