まずい、まずいまずい。かなりまずい。

ここまでして逃げてきたんだから、なんとしてでも捕まりたくないという変なプライドで、俺は1階のフロア内を走り回る。

どこか逃げられそうないい空き教室は……。


「あった……!」


そんな俺の目に飛び込んできた、ドアが半開きの空き教室。

電気もついていないし、誰もいないはず……。


俺は、後ろをチラリと振り返って、追いかけてくる高橋を上手くまけたことを確認すると、一目散にその空き教室に飛び込んだ。

ガタンッ!と、勢いよく閉まる扉。


「ふう……」


なんとか今日も逃げ切った。

いつもよりハイレベルな鬼ごっこだったことに思わず力が抜けてその場に座り込む。


「危なかった……」


高橋のやつ、まさか俺の裏ルートを知っていたなんて。また新しい抜け道を探さないとな。

そんなことを考えながらも、薄暗い空き教室を見渡そうとした時だった。



「何やってんの、オマエ」


「ひぇっ……」



背後から、低い声が聞こえたのはーー……。