望月くんは首を傾げたが、視線を真っ直ぐに口角を上げた。
「星村はそんなに心配しなくても暗くないよ。海がよく似合ってたし」
「そうかな」
「そうだよ。水着も本当によく似合ってた」
 私の方を向いてはにかむ笑顔に、思わず目を細めた。
「何か企んでる?」
「酷い! 事実なのになあ」
 不満げに眉をしかめる彼を見て、僅かに高鳴った鼓動を隠すように悪態ついたことを心の中で詫びる。
 最近の私は、彼のことが前よりも好きになってしまったらしい。この時間がもっと続いて欲しいし、私も彼の青春に混ざりたいと思ってしまっている。つまるところ、もっとという気持ちが湧いてきた。もっといたい。もっと話したい。
 けれど、現実の彼と接触をしてはならない、そんな予感がいつまでも拭えない。最初はこんな不吉な予感は感じなかった。
 ただ、私たちは生きる世界が違うから目立ってしまう。彼の作る輪に入るのも嫌だ、という気持ちからだったが。
 今は、学校で彼と接触をしてしまったら、彼の青春に入ってしまったら、この場所を失いそうで怖い。私は彼もだが、この場所も好きなのだ。
「まあでも本当、星村が同じ学年だったら楽しかったろうな」
「そう? 私面白い人間じゃないけどな」
「少なくとも俺の周りにはおにぎりを十個も平らげる子いないよ」
 思い出したのか、くすくすと笑い始める。そんなに笑わなくても。あえて唇を尖らせてみた。
「いいじゃん、健康的ってことだよ。ところでさ、修学旅行のお土産何かいる?」
「お土産って、ここに持ち込めないでしょ」
「うん、だから渡しに行くよ」