学校で望月くんを見かけるのは珍しいことではない。目立つ彼だから玄関先や中庭、グラウンドで見かけることはよくあることなのだが、保健室で出会うのは初めてだった。
 朝からいわゆる女の子の日で唐突に腹痛と貧血が酷くなってきたため、五限六限を捨てて保健室に出向く。先生にベッドを使う許可を得て閉められたカーテンをうっかり開けてしまった。
「あ、そっちじゃないわよ」
「す、すみません」
 貧血でぼんやりしているのはよくあることが望月くんで良かったような、良くないような。ベッドで眠る彼を見たのは一瞬だが、どぎまぎしてしまう。そそくさとカーテンを閉めて横のベッドに潜り込んだ。
 いつも夢の中で会っているが、突然現実に現れると思わぬ事態にどきどきしてしまう。外で見る彼とも、夢で見る彼とも違う、大人しく寝息を立てている望月くん。
 寝顔だと尚のこと顔の良さが際立つなあ、なんて思ってしまう。
「先生、ちょっと職員室に戻るからね。寝てていいから」
 先生の言葉に分かりましたとだけ返し、出ていった扉の音を聞くと、目をつぶった。
「星村」
 カーテンの向こうから声が発せられ、瞑っていた目を開けた。
「……望月くん、起きてたの?」
「うん、今起きた。よく寝た……」
「保健室にいるなんて、なんか、イメージと合わないね」
「どういう意味だよ……。実は最近バイト始めて、寝不足なんだよ」
「確かに体感だけど夢の中で会う時間減った気がしてた」
「そうだろ? 星村って、俺と会う以外の夢見てる?」
「そういえば見てないかも。じゃあどっちかが寝る時間早くても、望月くんに会う時間まで普通の夢は見ないんだ」
「そうだと思う、俺、結構最近は寝る時間遅いから」
「不思議だよね、なんで夢で会えるのか……。どうせなら彼女と会いたいでしょ」