近くにいた未弦、弓彩、そして三羽先輩もそれぞれ楽器を手に、舞台袖へと向かっていく。
藤井も同じように指揮者の棒を持ち、皆と頷き合いながら「準備はいい?」と確認し合っているようだった。
そして舞台に上がっていく彼らの姿は、スポットライトの光を浴びて、まるで暗闇の中から光の世界へ踏み出していくように見えた。彼らの背中には羽が生えているかのように輝いていた。
楽屋からそっと舞台の様子を覗き見る。彼らはそれぞれの位置に立ち、準備が整うと、藤井が指揮者の棒を振り始めた。
その瞬間、トランペットの力強く澄んだ音が空間を突き抜け、瞬時に人々の心を掴んだ。吹いているのはもちろん、三羽先輩だ。その鋭さと輝きは、静寂を一瞬で破り、まるで空気が震えるように周囲を満たしていく。音が高く伸びるたびに、その躍動感が心を揺さぶり、耳に残る余韻は深く心に刻まれる。ひとりで吹いているとは思えない迫力だった。
次に未弦がバイオリンを弾き始めた。彼女は鋭く繊細に弓を動かし、感情の振幅を鮮やかに描き出す。それに続いて、弓彩が優しくバイオリンを弾き始め、未弦を引き立てながらメロディーを滑らかに紡いでいく。
そして、泉平くんがクラリネットを吹き始めた。柔らかく温かみのある響きが、空気に溶け込むように広がっていく。トランペットとバイオリンの間に立つ彼の音色は、温かみを持ちながら両者を繋ぎ、全体の調和を深めていった。
バイオリンの旋律が流れると、クラリネットがそれに優しく寄り添い、トランペットがその上に輝くようなフレーズを重ねていく。その瞬間、全体が一つの壮大な物語を語りかけるように響き渡った。たった4人での演奏とは思えない迫力に、私は思わず息を呑んだ。「やっべー、緊張してきた」
興奮しているのか、奏翔は私の手を握っていない方の手で指を動かし始めた。まるで舞台上の部員たちと音を合わせるかのように、うずうずとした様子で。その動く指は鍵盤に触れていないのに、不思議とメロディーが頭の中に響いてくる。まるで彼の指先が空気の中に隠れた音符をすくい上げているかのようだった。
「よ、ようこそ!空和高校吹奏楽部へ!」
「えー、本日はお越しくださりありがとうございます!」
しばらくして演奏が終わると、三羽先輩と泉平くんは一度楽器を楽屋に置き、再び舞台に上がった。今度は舞台袖に近いところでそれぞれマイクを持ち、司会として話し始める。緊張は感じられるものの、なんとか声を張り上げて観客に向かって話しかけていた。その様子は少しぎこちないが、真剣さが伝わってきた。
その斜め後ろ、舞台の中央には未弦と弓彩が並んでバイオリンを構えて立っていた。机の上に置かれたプログラムを確認すると、次はふたりのバイオリンデュオの演奏が予定されているようだ。
三羽先輩と泉平くんが曲の紹介をし「2曲続けてどうぞ」と言い終えると、ふたりは楽屋へと戻ってきた。
その瞬間、バイオリンの伸びやかな音が会場全体を包み込んだ。未弦は先ほどと同じように鋭く繊細に弾き出し、弓彩は最初こそその演奏を引き立てるように優しく弾いていた。
しかし、サビに差し掛かると、弓彩はハモリを入れながら、未弦に負けないほどの迫力で演奏を始めた。ふたりのメロディーはまるでせめぎ合うように響き合い、時にはぶつかり合いながらも、姉妹ならではの絶妙な息の合い方で完璧に調和していた。
「やるわねー」
「負けられないな」
それに感心したのか、三羽先輩と泉平くんはニヤリと口角を上げていた。
藤井も同じように指揮者の棒を持ち、皆と頷き合いながら「準備はいい?」と確認し合っているようだった。
そして舞台に上がっていく彼らの姿は、スポットライトの光を浴びて、まるで暗闇の中から光の世界へ踏み出していくように見えた。彼らの背中には羽が生えているかのように輝いていた。
楽屋からそっと舞台の様子を覗き見る。彼らはそれぞれの位置に立ち、準備が整うと、藤井が指揮者の棒を振り始めた。
その瞬間、トランペットの力強く澄んだ音が空間を突き抜け、瞬時に人々の心を掴んだ。吹いているのはもちろん、三羽先輩だ。その鋭さと輝きは、静寂を一瞬で破り、まるで空気が震えるように周囲を満たしていく。音が高く伸びるたびに、その躍動感が心を揺さぶり、耳に残る余韻は深く心に刻まれる。ひとりで吹いているとは思えない迫力だった。
次に未弦がバイオリンを弾き始めた。彼女は鋭く繊細に弓を動かし、感情の振幅を鮮やかに描き出す。それに続いて、弓彩が優しくバイオリンを弾き始め、未弦を引き立てながらメロディーを滑らかに紡いでいく。
そして、泉平くんがクラリネットを吹き始めた。柔らかく温かみのある響きが、空気に溶け込むように広がっていく。トランペットとバイオリンの間に立つ彼の音色は、温かみを持ちながら両者を繋ぎ、全体の調和を深めていった。
バイオリンの旋律が流れると、クラリネットがそれに優しく寄り添い、トランペットがその上に輝くようなフレーズを重ねていく。その瞬間、全体が一つの壮大な物語を語りかけるように響き渡った。たった4人での演奏とは思えない迫力に、私は思わず息を呑んだ。「やっべー、緊張してきた」
興奮しているのか、奏翔は私の手を握っていない方の手で指を動かし始めた。まるで舞台上の部員たちと音を合わせるかのように、うずうずとした様子で。その動く指は鍵盤に触れていないのに、不思議とメロディーが頭の中に響いてくる。まるで彼の指先が空気の中に隠れた音符をすくい上げているかのようだった。
「よ、ようこそ!空和高校吹奏楽部へ!」
「えー、本日はお越しくださりありがとうございます!」
しばらくして演奏が終わると、三羽先輩と泉平くんは一度楽器を楽屋に置き、再び舞台に上がった。今度は舞台袖に近いところでそれぞれマイクを持ち、司会として話し始める。緊張は感じられるものの、なんとか声を張り上げて観客に向かって話しかけていた。その様子は少しぎこちないが、真剣さが伝わってきた。
その斜め後ろ、舞台の中央には未弦と弓彩が並んでバイオリンを構えて立っていた。机の上に置かれたプログラムを確認すると、次はふたりのバイオリンデュオの演奏が予定されているようだ。
三羽先輩と泉平くんが曲の紹介をし「2曲続けてどうぞ」と言い終えると、ふたりは楽屋へと戻ってきた。
その瞬間、バイオリンの伸びやかな音が会場全体を包み込んだ。未弦は先ほどと同じように鋭く繊細に弾き出し、弓彩は最初こそその演奏を引き立てるように優しく弾いていた。
しかし、サビに差し掛かると、弓彩はハモリを入れながら、未弦に負けないほどの迫力で演奏を始めた。ふたりのメロディーはまるでせめぎ合うように響き合い、時にはぶつかり合いながらも、姉妹ならではの絶妙な息の合い方で完璧に調和していた。
「やるわねー」
「負けられないな」
それに感心したのか、三羽先輩と泉平くんはニヤリと口角を上げていた。