第一印象は、あまり気が合いそうじゃないな、というモノ。
 「よろしく!!」
 手を差し出しながら言う君。
 初対面にして、言葉を投げかけられた僕は戸惑った。
 僕は驚きとなんと言えばいいかの焦りで、お母さんの後ろに隠れた。
 この島で数少ない同い年。
 親同士は仲良くさせたいのだろうが、無理だった。
 それでも、数少ない同い年だったこともあり、何度か一緒に遊んだこともある。
 けれど、僕たちはいつもお互いとあまり喋ろうとせず、交流する機会はなかった。





 仲良くするタイミングを失ったまま小学校の入学式。
 島には小学校が一つしかない。
 そこまで行くには、バスで行くしかない。
 六年間。人生の一部だと思えば短い期間。けれど、当時の僕には長かった。
 毎日毎日同じ時間のバスを待って、バスに乗って。バスを降りて、学校に向かう。
 もちろんクラスは一クラスしかないので、同じクラス。
 君はリーダー的存在だった。
 僕は端っこで本を読むのが日課だった。
 本好きの子がいたのもあって、読書仲間もできた。
 学校生活はそれなりに充実していたと思う。

 修学旅行。
 どこの学校にもあるだろう。
 もちろん、僕の学校にもあった。
 班決めすることもなくクラス一つで班一つ。
 君と喋るときはとてもギクシャクしていた。
 それは傍からみればわからないけれど、僕たちからしたら大きな行き違い。
 気まずかった。

 でも、君は僕を助けにきてくれた。

 ウォークラリーで迷子になったとき。
 手を引っ張って、助けに来てくれた。
 それがどれだけ嬉しかったか、君は知らないんだろうね。
 「ありがとう。」
 自分でも聞こえるか聞こえないかくらいの声量で言った。
 その時、握った手の力が強くなったと感じたのはきっと気のせいだよね。


 修学旅行が終わったらすぐに卒業式。
 帰りもバス。お母さんたちはおしゃべりが弾んでいるみたいで、こちらを見向きもしなかった。
 僕と君は、あまり仲が良くなかったけれど、お母さん同士はとても仲が良かった。
 低学年の頃なんか、バス停でお母さん二人が話し込んで大変だった記憶がある。

 中学校もみんな同じなので、泣いている者は少ない。
 下級生自体が少ないのに、君のお見送りには過半数以上の下級生が来ていた。
 どこでそんなに友達を作ったんだろうと思った。
 心底羨ましかったんだ。
 僕なんかにお見送りしてくれる子はいなかったから。

 少し時間が経つと、おしゃべりしていたお母さんが戻ってきた。
 「帰ろうか。」
 「…ん」
 そう言って歩き出した。
 これでこの道を通るのも最後かと、思ったら急にしみじみした。