その日から、僕はハルのことを真面目に調べはじめた。
 まず公共図書館に向かい、過去の新聞記事を確認する。
 春ごろ、このあたりで、高校生の亡くなった事故や事件はなかったか。
 だけど特にそんな記事は見つからなかった。

 一年生の教室も全クラス回ってみた。かなり勇気が必要だったけど。
 クラスに「ハル」とつく名前の生徒はいないか聞いて、その人物を確認してみた。
 しかしみんなちゃんと生きている。
 いままでに「ハル」という生徒が亡くなったという事実も噂もなかった。
 やっぱりハルはもっと前に亡くなった人なのではないだろうか。
 ハルは違うと言っていたけど。
 僕は自分の席で「うーん……」とうなる。
 いったいハルは何者なんだろう。

 放課後、聖亜たちが騒ぎながら教室から出ていく。
 今日はみんなでカラオケに行くらしい。
 その声が遠ざかるのを確認すると、僕は急いで階段を駆け上がった。

 屋上へ出ると、今日もハルが青い空の下で、遠くを見ていた。

「ハル、お待たせ」
「ユズ!」

 ハルがうれしそうに駆け寄ってくる。
 やっぱりこんな姿は、しっぽを振る子犬のようだ。

「会いたかったです!」
「お、大げさだなぁ。昼休みに会ったじゃん」
「休み時間にユズと会えても、こんなふうに話せないですし。思いっきり話せるのは、放課後のこの時間だけなんですよ」

 たしかにそうだ。

「で、ボクのこと、なにかわかりました?」
「いや、まったく」

 僕の声に、ハルがわかりやすくしょげた。

「あ、ごめん。僕だっていろいろ調べてるんだけどさ」
「はい、わかってます。わかってますけど……」

 ハルがすとんっと座り込み、はあっとため息をつく。
 こうやって僕の目の前で、喜んだり落ち込んだりしているハルは、幽霊なんかには見えない。
 本当に僕の友達が、目の前にいるような気持ちになる。
 こんなふうに毎日会って、一緒に話したり笑ったりする友達ができたのは、何年ぶりだろう。