夏休みのとある日。
ドアを開けて、母さんがやってきた。
「なに」
まだ朝だったのもあり、私はイライラしていた。
部屋に勝手に入ってこられてさらにイライラした。
けれどそれをぶつけると怒られるので、ギリギリ怒られないラインで話す。
「なにってなに?今日は葬式よ?」
「は?」
理解がおいつかないまま、クローゼットから洋服を出す母さん。
私はなにがなんだかよくわからず、動けなかった。
「……葬式、って何、?私知らない、」
「そんなわけないじゃない。昨日知らせたもの」
昨日?昨日、誰かが亡くなったの?
本当に知らないのだ。わからない。
「昨日、誰が亡くなったんだっけ、?」
知らされていないのだから、誰が亡くなったのかもわからない。
私が忘れたと言う体で話す。
「はあ。ほんとあんたはてんでだめね。」
そうじゃない。誰?誰が亡くなったの?
本当は早く催促したかった。けれど、じっと待つ。
ここで機嫌を悪くされたらたまったもんじゃない。
「義父さん……お父さんのお父さん、あんたから見たじいちゃんが亡くなったんでしょ?覚えてないなんて、どれだけ薄情者なのよ」
嘘だ。信じたくなかった。

そんな思いをよそに母さんからは催促の言葉を投げかけられる。
放り投げられていた制服を着て、車へと向かう。
そのまま数時間、車に揺られながら本州まで出る。

その間私はおじいちゃんとの思い出を思い出していた。