でも、だって、本当にびっくりした。

まさか花嫌いの人が本当にいたなんて。僕自身、生粋の花好きだからだろうか。その事実がどうも現実味を帯びているように感じない。


「嫌いって、ほどじゃ……触るのが怖い程度さ」

「めっちゃ嫌いじゃん」


呆然とする僕に少し拗ねたのか、彼が強がるように小さく語る。

けれどそれもなんの弁解にもならないレベルの呟きだったから、またもや空気を読まず普通にツッコんでしまった。

花を触るのすら怖いなんて。程度を語る必要すらないよ。めっちゃ嫌いで間違いないよ。


「って、ごめん。呑気に話してる場合じゃなかったね。花嫌いなら、えっと、僕すぐに消えるから!」

「……え?どうして?」

「どうしてって、だって君は花嫌いで、僕は花好きだから。僕、さっきも花いっぱい触ったし、きっと花びらだらけだよ」


我に返ってすぐ、ササッと立ち上がってもう何歩か彼から下がる。

ぱんぱんっと服を軽く叩いて、目を丸くする彼にニカッと笑顔を向けた。気を遣わせないように、きちんと最後にフォローしておかないとね。


「どこのクラスの子か知らないけど、気を付けてね!窓際は日当たりがよくて、花がたくさんあるから!」