「あ……ごめんね、急に怒鳴っちゃって」


心の底から申し訳なさそうにする彼を見て、まずはほっと息を吐いた。よかった、少なくとも初対面で早々嫌われたわけではなさそうだ。


「ううん、いいんだ!気にしないで。変なやつが近寄ってきたら、普通に怖いもんね」


自分で言って少し傷ついた。実際、傍から見れば自分は変なやつなんだろうけれど。

トホホと涙ながらに笑って言うと、彼は目を丸くしてぶんぶんっと首を横に振った。


「違う!変な子だなんて思っていないよ。ただ、その……君の裾に、花弁がついていたから、驚いて」

「変じゃない!?嬉しいなぁ、そんなの初めて言われたよ!……って、うん?花びら?」


一度は空気を読まずに喜んでしまったけれど、すぐに気になるセリフを聞き返して首を傾げる。

聞き間違いじゃなければ、今この人、僕の裾に花びらがついていたから驚いた……と言ったのだろうか。


「えぇっと……うん?あぁ、確かに花びらがついてるね。でも、そんなにびっくりすることかな……」


困惑しながらも、とりあえず裾を確認して例の花びらを摘まみ取った。

目の前に掲げてじーっと花びらを見つめ、もしかしてでっかい虫に見えたとかか?と目を凝らして考える。