「……うん?なぁに?」

「え、あっ、あぁいやっ!なんでも!」


紙から視線を上げた彼がこちらを見つめる。

怪訝そうにする様子を見て、慌ててぶんぶんっと首を振った。しまった、呆然としていたとはいえ不躾に見つめすぎちゃった。


「なんでもないよ!ただそのぅ、えっと、ダリアみたいに綺麗だなって、驚いただけ!」


言いきってすぐ、脳内で「うわぁっ!」と頭を抱える。なんてこった、またやっちゃった!


「ダリア?」


またもや訝し気な声が聞こえる。これはもう、完全に不審者扱いされたに違いない。

それもそうだろう。初対面で相手を花にたとえる人間なんて、普通に考えて怪しすぎるもの。


「ち、違うんだ!悪い意味じゃなくって!ダリアみたいに優雅で気品があるから素敵だなぁと……って、あぁ!またやっちゃった!」


あわわっと慌てながら釈明するものの、如何せん慌てたせいでさっきよりも不審な感じになってしまった。

僕ったらいっつもこれだ。花とばかり話して、人とは滅多に話さないから。

コミュニケーションが苦手なばかりに、こうしていざ人を相手にすると慌てて余計なことしか話せない。また例の悪い癖が出た。


「ご、ごめんね。なんでもないんだ。えぇっと、その……ごめんね!」

「はっ、ちょっと君──!」