柱の影にならない場所に置けば、きっと忘れられることはないよね。そう考えながら花瓶を新たな場所に置こうとした時だった。
「ねぇ。君、何してるの」
「えっ、わぁっ!」
突然聞き慣れない声が飛んできて、驚いた拍子に手を滑らせる。
落っことしてしまいそうになった花瓶を慌てて抱き締め、ほっと息を吐いた。よかった、危うく花を傷つけてしまうところだった。
……って、いやそうじゃない!今、確かに右から声を掛けられて──
「えぇっ!だ、だれ!?」
こんな時間に登校する変わり者なんて、僕以外いないはず。
そう思いながら目を見開き振り返ると、そこには見慣れない男子生徒が立っていた。
「誰って、君の方こそ。君は二年生だよね。ここは一年の教室のはずだけど」
彼は「あれ?違ったかな」と言いながら、手に持った紙を見下ろす。
見たところあれは校内地図のようだけれど……と疑問が湧いたけれど、それよりも彼の美しすぎる容姿に見惚れて、疑問をぶつけるどころではなかった。
気配もなく現れた謎の男子生徒は、それはもう、とても美しかった。
白に近いブロンドの髪と、光が当たると青っぽく見える切れ長の瞳。彼の容姿はまるで人形のように美しく整っていた。