「あっ、う、うん!よろしく!」


まるで今朝のことがなかったかのような、初対面のような雰囲気で挨拶されて驚いた。

いや、僕は存在感がないってよく言われるし、もしかしたら本当に今朝のことは覚えていないのかも。

そう思い、特に何も考えることなく違和感を受け流した。


「お前ら、転校生が珍しいからってあまり高嶺に絡むなよー」


担任の声が聞こえて、ハッと我に返る。

聞こえた忠告通り、周囲のざわめきはまだ止んでいなかった。むしろ、さっきよりもヒソヒソと囁かれる声が大きくなっている気がする。

クラスのほとんどの視線が花嫌いの転校生……高嶺くんに向けられていることを察して、僕は少し、今朝見知った繊細そうな転校生の姿を思い返して眉尻を下げた。