キャーッと耳をつんざく女子たちの黄色い悲鳴。それも気にならないほど、僕の視線は笑顔を貼り付ける転校生に縫いついたままだ。

全ての光を取り込んでしまいそうなほど、光そのものみたいなブロンドの髪。いつかテレビか本か何かで見た宝石のような、艶やかに煌めく碧眼。

今朝見たままの美しい姿を前にして、僕は思わず頬杖をついていた姿勢をガクッと崩した。


「は、花嫌いの……」


──花嫌いの後輩だ。


ぱっと浮かんだ印象に、自分でも少し驚いた。

あの人間離れした容姿でも、絵本に描かれる王子のような笑顔でもない。初めに浮かんだ印象が花嫌いという性質であったことに苦笑した。


「……あの人、後輩じゃなかったのか」


自己紹介を終えて歩き出す彼を見つめ、ボソッと呟く。

そういえば今朝、手に地図を持っていたな。今更そんなことを思い出しながら、ふいにあることに気が付いて瞬いた。


「え?な、なんで」


気のせいか?彼が真っ直ぐ、こっちに向かって来ているような。

呆然と目を丸くした直後、彼がなんてことなさそうに隣の席に着いた。僕の隣の席に、だ。


「隣の席みたいだね。よろしく」


貼り付けたような笑顔がこっちを向く。それを受けて、僕は慌てて頷いた。