「でも、安心して。今日からは私がやるから」
「それは助かるな」
 正に本音だった。
「今日の朝食はたいしたものじゃなかったけれど、誰かのために作るって楽しいものね」
 真澄は正に嬉しそうな顔をしていた。約三十年もの間、何一つ出来なかった真澄にとっては、目玉焼きを作る程度のことですらできるのが幸せに思えたのだろう。
「いや、僕も誰かと一緒に食べる朝食がこんなに良いものだということを忘れていたよ。別に家族の仲が悪かった訳じゃないんだけど、僕が大学に入ってからは、みんな朝食を取る時間もバラバラになっちゃってね」
「そうだったの。でも、これからは毎朝一緒に朝食が食べられるわ」
「そうだね」
 嬉しそうに笑う真澄の顔を見ながら、僕もまたささやかな幸福を噛み締めていた。

 朝食の片付けはすぐに終わった。翌日を含めて二日間、バイトもなかったので僕は朝食後に急いですることも無かった。僕たちはとりあえず寝室に置かれたテレビの電源を入れその前に座った。テレビのニュースは夏休み中とあって、浦安の遊園地が朝から賑わっている様子を伝えていた。そのニュースを見ながら真澄は少しため息混じりに言った。