真澄が目玉焼きを二枚の皿に乗せてコップの隣においた頃、トースターから食パンが飛び上がった。真澄は焼きあがったトーストを別の皿に乗せて、目玉焼きの隣に置いた。僕はそんな真澄の様子を、突っ立ったまま、何か美しいものを見るような気持ちで眺めていた。
「じゃあ、食べましょうか」
真澄が席に着いた。僕は真澄の向かいに座った。
「いただきます」
真澄が先に言った。
「いただきます」
僕もそれに続いた。
「僕はこのアパートで誰かと向かい合って朝食を食べる日が来るなんて想像したこともなかったな」
僕が感慨深げに言うと真澄はクスクスと笑った。
「朝食っていってもトーストに目玉焼きだけじゃない。そんなに嬉しそうにされるとこっちが恥ずかしくなるわ。でも、冷蔵庫の中にあるのはほとんどビールだけなんだね」
「まあ、知っての通り食事はほとんど外食だからね」
「私は何もしてあげられなかったから言わなかったんだけど、外食一辺倒は経済的にも健康的にも良くないわよ」
真澄は少し難しい顔をして小言めいたことを口にした。
「まあ、料理なんてできないから仕方がないよ」