第三章

 八月十七日(月)

 目が覚めると、真澄がキッチンに立っていた。フライパンで何かを焼く音が聞こえてきた。布団から起き上がって近づいてみると、真澄は目玉焼きを作っているところだった。
「おはよう」
僕は真澄に声を掛けた。
「おはよう。良く眠ってたね」
真澄は僕の方を見ずに目玉焼きに集中していた。
「もっと良い物を作ってあげたかったんだけど、冷蔵庫の中、卵くらいしかなかったから目玉焼きにトーストで我慢してね」
「何か手伝おうか?」
「じゃあ、牛乳を注いで、トースターのスイッチを下してくれる?」
「分かったよ」
僕は既にパンが入っていたトースターのスイッチを下した。次に食器棚を見たが揃いのコップは無く、しかたなく形の違うコップ二つに牛乳を入れて向き合うようにテーブルに置いた。